秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

御縁

このところの慣例のように、朝から連絡業務や資料づくりに追われ、明日の段取りを決めてから、どうしても…と誘われていた女優のMさんのCD発売記念の祝賀パーティに顔を出す。
 
Mさんの父君は日本の歌謡界を牽引した有名な作詞家。美空ひばりのヒット曲を出がけたが、その歌を娘であるMさんに歌わせたかったらしい。「りんご追分」…。若い人の中には、そのタイトルさえ知らない人が多いだろう。だが、ある程度の世代の人にとっては、だれもが口ずさむような歌だった。
 
Mさんが若い頃、レギュラーとして出演していた、ある有名ドラマの監督のSさん、有名脚本家のKさん、文学座出身で脚本家になり、いまは役者がやりたくてしょうがないというHさんたちと同じテーブルになり、いつか、映画のことやドラマのことで盛り上がる。
 
実は、10数年前、オレが企画し、実施していた教育シンポジウムの基調講演で登壇してもらおうと著名脚本家のKさんを呼ぼうと電話をしたことがある。その頃は連作つづきで時間がないと断わられた。その話をするとうろ覚えながらかすかな記憶がおありになった。
 
「丁度その頃、NHKでやったドラマがあったでしょう? あれを見て、Kさんにしゃべってもらいたい…そう思ったんですよ」。そういうと、「へぇ。あれ、見てくれたの?いやぁ、それはうれしいなぁ」と、NHKではありえない設定のドラマで、オンエアも昼間。たぶん視聴率はそうよくなかったろう反応が帰ってきた。Kさんの本にしては、作風がちょっと違っていて、しかし、いい作品だったのだ。確か、芸術祭の賞も受賞している。
 
だが、縁とは不思議なものだ。なんでも、明治座の芝居をやることになって、商業演劇のやり方がわからないと思っていたら、新潮社のスタッフから、演劇評論家のW先生を紹介しましょうということになったらしい。それも、オレが東宝演劇で、W先生に室長時代にお世話になった話から出てきた。
 
「文章が読みやすいよね。Wさんの日本演劇史、そのために読んだよ」。「きれいな日本語ですよね。ぼくもW先生の本を学生時代読んでいて、W先生がいるから東宝にいったようなものです」。「Wさんのことで何かあったら連絡するよ。力貸して…」「いや、ぜひぜひ」…ここでW先生の話題が出るとは思なわなかった。
 
帰り道もみなさんと一緒に帰ったのだが、ここぞとばかり、10月のイベントの件とNHKの元チーフプロデューサーのSさんを呼ぶ話をしたら、今度は監督のSさんが、「えー!」。ある劇団のワークショップで一緒されていたらしい。Hさんは、イベントのチラシができたら、みんなに連絡してよ…といってくださった。それと、作品があったら使ってくれとw
 
大先輩のみなさんなのに、恐縮至極…というほど、恐縮はしていないがw なにせ、S監督、脚本家のKさんもW大の大先輩。Kさんは、なんとオレが度々仕事でいく、徳島市のご出身ではないか…。
 
何事につけ、どのような立場にある人であろうと、どのような実績を残してきた人であろうと、恐縮至極をやっていては、つながらない。礼は失してはいけないが、多少ずかずかの失礼はあっても、踏み込んでいかないと、そういう人を越える仕事も作品もやれはしない。
 
いまMOVEがこれだけ福島の主要自治体で受けいれられているのも、そのずかずかがあってのことだ。いただいた縁を御縁と拝める気持ちがあれば、大丈夫。