秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

未来への希望

会津若松市八重の桜プロジェクト推進室との打ち合わせを前日に終えて、ホテルに入り、メールをチェックすると福島県東京事務所のKさんからI大学企画連携課のIさんとアポイントがとれている…という連絡が入っている。
 
翌日、1時間ほど若松駅の待合所で本を読みながら時間を調整し、駅前の気にないっていたタクシーに乗って、大学へ。ロンドンタクシーが駅前にとまっていたのだ。観光専用かと思っていたら、通常運転もしているという。
 
予定より伸びた会議を抜けて時間を割いていただき、Iさんに用件を伝え、MOVEの事業を簡潔に説明し終わると…「実は昨年まで、県のエネルギー事業の部署にいたのですよ」と笑顔が返ってきた。おっ…と思った。ここでは詳細に説明できないが、オレが考えているMOVEの事業は、実は、新しいエネルギー開発とその活用システムをより広く解釈して、被災地や地域の新生事業に展開しようとするものだからだ。
 
短い時間ながら、直観でこの方が担当者だったというのは、偶然ではないと確信した。
 
時間的な制約があったからだが、てきぱきと意志の疎通がはかれたことで、予定より1時間早く、いわき行のバスに飛び乗る。約3時間かけていわき市観光物産課へ。金曜日はアロハデーとなっている市役所。前日の猛暑とはうってかわり、肌寒いほどの陽気なのに、みんながんばってアロハを着ているw
 
担当のW課長とバカ話をまじえながら、地域情報を交換し、オレの知人が昨年から苦労して取り組み、今月実施開催へこぎつけた湯本温泉のホタルイベントについて、あれこれ語り合う。実務のFさんが現れるとW課長、あとは任せるといった雰囲気で席をはずした。そこに、W課長のオレやMOVEに対する信頼。Fさんへの信頼が見える。

出会ってすぐのころには、こうはいってなかった。人の縁というのは、それを生かすもつぶすも人次第、こちらの心がけ次第でいかようにも変わる。自分が変われば、相手は変わるのだ。
 
5時半に地元海鮮卸販売の同志Oさんと合流し、まずは、二人で腹ごしらえ、1時間半ほどして、地元、平の活性化のために始めた、いわき街ぐるウォークの「せんだみつおを探せ!」をやっている福島民報のKさん、アシスタントで女優、DJのTK、デザイナーでせんだみつお付のIさんたちと平の店を回る。そのうち、Oさんの仲間やKさんの同級生なども合流し、10件近い店を梯子w  Oさん、Kさんにまたすっかりごちそうになってしまった。痛み入ります。
 
オレたちのように外から福島への支援と新生を試みようとする者がいる。また、地元の人々の中から、OさんやKさんのように復興、再生、新生のきっかけを生み出そうとしている人々もいる。しかし、そうした思いは、必ずしも地元の人々すべてに一応に広く伝わるものではない。
 
確かとまではいかなくても、これではいけないという志を持つ者、地域を変えていこう、これまでの発想ややり方を変えていこう…そう願う人たちをしっかり掘り起し、最初は数は少なくとも、熱意を抱く者たちから最初の一歩、確かな一歩を踏み出していくしかない。それはやがて、ひとり、また、ひとりと思いが伝搬し、いつか理想と笑われていたもの、不可能だと投げ捨てられていた思いを現実のものにしていく。

時間はかかっても、試練は多くとも、自分がこの世で与えられたそれが使命だと自覚すれば、決してあきらめずにそれを続けていくことができる。そこにこそ、いままでにない地域新生の糸口が見えてくるのだ。
 
市役所のW課長が話の途中でいった。「いやいや。退職後、また観光の事業に私のような人間がかかわるのは、かえってよくない。これからはなまじっかの経験があることでこれまでの常識や人のしがらみにからめ捕れらてしまうような人材じゃなく、観光とは無縁な人材は、きっちりビジョンを示し、こうやるべきだ、こうすべきだと新しい動きをつくっていくようにすべきですよ」
 
入れ違いに打ち合わせの席についた実務のFさんがいった。「なんでもかんでも並べて、とりあえず売れればいい。買ってもらえればいいではなくて、いわきといえば、これ。これは、いわきだけでしか手に入らない。そうした特色と魅力を作り出して、それを全面に出して地域の独自さをアピールする…そういうことに真剣に取り組まなくてはいけないと思ってるんです」
 
だが、この言葉は、いわきの仲間たちからも聞こえた言葉だ。そして、今回、福島市会津若松市をまっていても、聞こえてきた言葉だった。
 
生活者すべてにそれが行き当たるまでには時間がかかるだろう。原発や大型資本に依存してきた地域の在り方を根本から変えるには教育がいる。そして、教育には時間がかかる。しかし、それをあきらめない中にこそ、5年後、10年後の新しい地域の姿が出現するのだ。
 
こうした声こそ、人々の心の中にある、未来への希望。