秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

やばいやばい

多くの人がハリウッド版映画『イルマーレ』が韓国映画のリメークだということを知らない。それほど、本家韓国版『イルマーレ』は、公開当時、一部の韓国映画ファンにしか知られていなかった。日本映画界でも知られていたのは一部だ。
 
その鮮烈な映像美とおとぎ話をおとぎ話と感じさせないストーリー展開。それでいながら、だれもが経験する甘酸っぱい純愛や親子の葛藤を見事にリアリティを持って映像化していた。ほとんど無名に近かった主演のチョン・ジヒョンイ・ジョンジェをスターダムに上げた作品。
 
いつかリメイクができたら…。『イルマーレ』と出会って、オレはずっとそう思い続けていた。そして、日本の映画界は簡単にハリウッドでのリメークを許してしまった。

先週末公開された『青い塩』。その
イ・ヒョンスン監督の久々の新作ということで期待していたが…見事に惨敗。唯一の救いは、美形ながら個性的な女優シン・セギョン。整形の噂もあるが、どこか雰囲気が北川景子に似ている。余談だが、一時、芝居をみてやっていた、大手プロダクションにいて、大学で映画学科にいるYにも似ている。そういえば、Yも韓国の血が流れていたっけ…

やくざから足を洗い、料理人を目指す40代中年男(「大統領の理髪師」で権力におもねるダメおやじを見事に演じた、ソン・ガンホが演じている)と元オリンピック代表射撃候補で、やくざに金でしばられ、男の監視役、最後は狙撃手になる20歳の少女の恋物語。設定やストーリーのチープさをからくもカバーしているのは、俳優の芝居。

作家の体質にもよるのだろうが、宮崎駿のように、いくつになっても少女ばかりを主人公にして超ロリコンを押し通す作家がいるように、中年、高齢になっても、幼さの残る女性を主軸にした作品をつくりたがるプロデューサー、監督や脚本家がいる。イ・ヒョンスンも歳をとったものだw

確かに、男女にかかわらず、20歳前後の時期は、存在だけでどこか人を引き寄せる魅力がある。簡単にいえば、若さだ。大人な部分と子どもの部分がない交ぜになったその姿は、無防備な若さを終えた人間にはいとおしい。しかし、だからといって、それに執着心が強いというのもいかがなものか。
 
自分の過去をふりかえってもわかるが、大人が思うほど、その時期の心というものは、弱くもないし、同時に、強くもない。つまりは、いかようにも、変わっていく一瞬の時期。大人のひとつのフィルターでとらえきれるほど、長く続かないし、やわなものではないのだ。
 
宮崎駿がそうであるように、多くが描くのは、落ち着くところは「いい子」。いい子というのは、大人のフィルターの価値基準に合っている子ということだ。そして、大人のフィルターとは、自分の都合のいいように動いてくれる子。結局は、自分の価値を押し付けてもとりあえず従ってくれる若いやつがいいというだけのことだ。
 
だから、宮崎の作品は家族が安心してみていられる「いい映画」になっているw
 
どのようなしたり顔や背伸びをしても、世代の違いをおもしろがっていられるのは最初だけで、変化と成長が現実になってくれば、相手は反論もすれば、意見に従わないことも起きる。それを素直に受け止められる大人など簡単になれるものではない。
 
それがわかっているから、若いやつは、多くを語らないし、面倒になればすっと姿を消す。オレ自身、若い頃、面倒な大人にはそうしてきた。いってもわからないバカ大人には、それしかないw…というのが若さということだ。

中年のオヤジと20歳の少女の恋…まだ、映画『レオン』くらいの幼さがあった方がリアリティがある。とはいえ、リュックベンソンもロリコンw。

この間、飲み会の主役だったYっちが、いつもFBで、オレたち男どもが若い女性話題で盛り上がると、「男ってどうして、若いおねーちゃんばかりに眼がいくの。ほんとに子どもね」と諌言をくれる。確かに。
 
こういう話題になるといつも出す映画がある。シェールが主演し、ニコラス・ケージのデビュー作『月の輝く夜に』。
 
その中で、イタリア系移民一家のシェールの父親が若い女性と浮気をしている。それに、妻は気づいている。ある日、夫にこう問いただす。「どうしてあなたは浮気をするの?」。すると、高齢の夫は妻の手を握っていう。「死ぬのがこわいからさ…」。そして、妻の胸に自分の顔をうずめて泣く。老いた妻も夫の頭をなでながら、泣く。
 
困ったオヤジだが、このオヤジの切実さがわかるのは、共に歩んだ妻だけだろう。それがわかっているから、男は若い女性としばしの恋にたわむれることができる。しかし、愚かな男にはそれができず、まるで自分が20代かのような気分で幻想の恋に落ちる。
 
それをするりとすり抜ける作品になっていることが、この作品のもうひとつの救い。とはいえ…この若い女優に眼がとまるオレも、やばいやばいw
 
 
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