秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

地域が立つために

地域が立つ…ということが容易でないことはだれもが知っている。しかし、地域が立つようにならなければ、この国のあり方は変わらない…ということも人は知っている。
 
では、なぜ、地域が立たないのか。
 
簡単なことだ。中央官庁が桎梏となっているからだ。厚労省国土交通省を始め、中央官庁の出先機関である「地方事務所」というものが地方ででかい顔で存在し、県市町村行政を金縛りにしている。予算、計画、実施のあらゆる行政に関与し、許認可という壁で権益を主張する。

県は県で、市町村行政への予算の振り分けをコントロールし、県を通さなくてはできない事業の壁を設けている。

簡単にいえば、このしくみがバブル後の地方景気の再生を阻害してきたし、中央官庁のエリートといわれる連中が現場の実状も学ばないまま、政治的思惑やそれぞれの官庁の権益争奪戦の中で、行政を仕切ってきた結果、今回のような震災がくると、赤子の手をひねるように、なにひとつ実効性のある計画も提案もできないというていたらくを見せた。
 
なのに、なぜ、この権益、既得権を中央官庁から奪えないのか。これも簡単なことだ。依然、自分の会社の利益向上のため、中央官庁とのパイプを持つことが有効だとしがみついている輩が、政財界を始め、中小企業においてもいるからだ。許認可権を握っていることがこれをどこかでよしとする淀んだ空気をつくっている。まして、公益法人など、天下り組織まである。

同時に、さすが官僚エリートは、識者や話題のベンチャーなど新しい事業者の取り込みがうまい。国の活力のために…といいながら、結局は、そうした在野の連中の知恵を利用し、また、コントロールすることで、支配的な関係をつくる。護送船団方式は終わっているが、中央官庁を取り巻く環境の実質はそう変わっているわけではない。
 
かつてのように中央官庁の官僚が優秀ならば、それもありだったかもしれない。しかし、いまや情報肥大とコントロール不全がこの国の行政を襲っている。優秀な人材は減り、国の将来ビジョンを預けるに足る人間など皆無に等しい。そして、能力のない、エセエリートほど始末が悪く、未熟なビジョンを語りたがる。当然、語る対象は、政治域や行政の現状に知識の乏しい人間たちだ。

それを聴いた無知なる人々は、それこそがこの国の将来像だと錯覚する。あるいは、そうしたビジョンに傾倒する。中には、官僚でありながら、官僚批判をする輩もいるから、錯覚するのは当然。
 
この世の中、組織に帰属しながら、帰属する組織をぐちゅぐちゅ愚痴る奴ほど信用のおけない奴はいない。黙って、行動あるのみ。誤りを糺す力はそんなところにしかない。

地域が立つための方策を、だから、中央官庁や行政に依存していは不可能。これまでのように行政がなんでもやってくれるはず…という依存から逃れなければ、地域が地域として立つ道など見えてはこない。