秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

気概があれば、もはや無名ではない

徳島での上映会とトークショーをはさんで、撮影準備、撮影とプライベートな時間がほとんどなかった。月曜からは、編集作業が始まり、今月中はほとんど自分の時間がとれない。空いたのは、皮肉にも、14日のバレンタインデーw そして、わずかに今日w
 
その間に、MOVEの行動計画の下案をつくり、4月始動へ向けた準備も進めなくてはいけない。書きかけの原稿を進めるためには、実業と協働事業の作業を早めなくては…
 
だからというわけではないが、昨夜、クロースタジオでの撮影終了後、近場の門前仲町にある、著名大衆飲み屋ののれんをくぐる。クロースタジオで仕事があると、担当のKプロデューサーや助監督のYは、よく来ているらしい。
 
コの字型のカウンターが3連ある飲み屋さんは、1Fも2Fもほぼ満席。格安のつまみながら、うまい当てに、低価格の酒。丸椅子に肩を寄せ合うように座り、注文のタイミングをねらいながら、忙しく働くお兄さんやお母さんに声をかける。門前仲町ではだれでも知る店だ。
 
客同士の会話の声が大きいと兄さんから鋭く注意されるw 
 
その注意の仕方が学校の先生っぽく、反論の余地がないw 「大勢の客がいる。ここは公共の場だ。周囲への気遣いを忘れるな…」とったごく正当な常識。「ほら。そこもちょっと声が大きいよ」。すっとオレも注意されたw 下町らしい。

最近、心なく騒ぐ団体や若い連中が多い。酒が入れば、そうなるのはわからなくはない。オレ自身も若い頃、そうだったと思うし、いまでも、難しい話や議論になれば、声が自然と大きくなる。しかし、たしなめる側の気持もよくわかる。

スペースのある気の利いた居酒屋などでは大人数の客と少人数の客席を隣接させない。しかし、狭い居酒屋で、繁盛している店はそうもいかないだろう。結局は、客の常識や判断にまかせるしかない。
 
いつも秀嶋組で撮影のすべてを仕切っているせいもあってか、今回、別の制作会社と組んでみて、改めて、いろいろと気づかされることが多かった。
 
初日の撮影の終わりには、終了ミーティングの中で、ちょっとした小言をいった。彼らにはきつかったと思う。二日目には、次の日の出演者やエキストラへの寒さ対策に念を押した。小言効果かどうかはわからないが、三日目には、いろいろ細かい不具合はあるにせよ、注意された点を修正し、現場での声の掛け合いもよくなっていた。
 
小言や注意をされて、不機嫌な気分にもなるだろうし、反発を感じることもあるだろう。しかし、いわれている内容に道理があれば、プロならそれなりに修正する。助監督のYは、がまんしつつ、終始イライラしていたがw
 
どのような仕事でも、現場では互いの声かけと意志の疎通、先を見越した気働きが大事。役割分担への自覚も。これは仕事に限ったことではない。
 
何か連絡をもらったら、すぐに返事をする。連絡を怠らない。いい内容であれ、よくない内容であれ、きちんと向き合うということがなければ、何事もこじれる。場合によって、それによって、叱ること、叱られることもある。しかし、それで落ち込んだりするのではなく、言葉を前向きにとらえ、言うべきことはいい、かつ、言わなくてよいことはいわず、仕事に生かす。
 
上下の立場なく、間違いは素直に謝る。そして、常識中の常識だが、いろいろあっても互いへの感謝と尊敬は忘れない。だから、あいさつはきちんとする。議論や行き違い、ぶつかり合いがあっても、それなら、物事はいい方向へ進んでいく。信頼も深まる。
 
といった、当り前のことを秀嶋組はやっているなぁ…と改めて、気づかされたのだ。今回組んだ新しいスタッフ、撮影隊や音声、照明の連中はそのへんのところがよくわかっていた。制作部と演出部が手薄。しかし、今回のことで、少し気づきを持ってくれたらと思う。
 
秀嶋組としてスタッフが固定するまで、オレは3年かかった。いろいろな連中と仕事をし、オレの描こうとする作品世界の共有や共感、仕事ばかりでなく、人間同士の付き合いの中で、互いの気持を切り結ぶのに、それだけの時間がいった。
 
基本は簡単だ。流れ作業のように、仕事をこなすのではなく、どのような仕事でも、そこにいい作品を残そう、つくろうとする志の高さだ。有名、無名はそこでは関係ない。
 
有名だからといって、その気概がなければ、無名に等しい。無名だからといって、その気概があれば、もはや無名ではない。その確信の中で、仕事をするということだ。