秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

現場主義

昨日の早朝から、東映関連の作品がクランクイン。寒風の中、オール屋外ロケ。寒さについ粘りがなくなる…気持ちを越えるのは気合しかない。
 
しかし、昨日から強い寒波。撮影していた人形町では、くるなと思っていたら、やはり小雪が舞う。スタッフも大変だが、役者、エキストラもつらかったろう。今日、明日も早々天気が回復する兆しはなく、寒さとの闘いが続く。

いろいろな思いや生活を抱えながら、厳しい状況、条件の中で、ひとつの作品を協働してつくり出すというのは、現場にかかわるひとり一人にもあることだが、同時に、作品の制作依頼者の思いにもある。
 
しかし、すべての人々が合意できる形になるには、いろいろなハードルがある。すんなりそうはいかないのが、現実というものだ。万全ということはない。だからこそ、その場その場でのベストを尽くさなくては後悔と反省ばかりが後に残る。
 
毎回のことだが、オレは現場の仕事が終わるたびに、もっとああすれば、こうしておいた方がよかったのでは…と考えることは少なくない。もっとありようがあったのではないか…常にそれを反芻し、自分の至らなさや未熟さと向き合わされる。
 
ひとつことをまとめる中に、完璧なものはない。だからこそ、より万全なものへと闘志もわけば、次の作品や仕事でこそ…という熱意も生まれる。
 
そんなこんなを頭で反芻しながら、現場ミーティングを終わって帰ろうとすると、秀嶋組の俳優のひとり、Oから久しぶりの電話。乃木坂にいるので会えたら…という。
 
長寿庵で待ち合わせすると、「今夜から被災地へ行きます」。
 
前々から現地をその目で見なくては…といっていたが、有志を募っていくことにしたらしい。が、しかし。バイト先の社員たちに話すと、被災地を見にいくなんて不謹慎だ!…と激烈に批判されたらしい。
 
確かに、一時期、心ない人々が被災地を観光地気分で訪れ、写メをとって、地元の人たちから痛烈に怒られたといった話もある。
 
が、それは行く連中の心のあり様が問題で、現地をその目で見ようとすること自体、それほどに批判されることではない。
 
現地にいく、いかないはオレにとっては大きな問題ではないが、いけるのなら、いって、体感するのは大事なことだ。テレビ報道で見ているものとは違う光景がそこにはある。人の思いもそこにある。知ることによって、教えられる、知らなかった現実もある。
 
行動し、自分の至らなさ、思いの浅さを確認し、では、自分には何ができるのか、何をしなくてはいけないのか…それを考え、気づき、行動する。すべては現場が教えてくれる。
 
きちんとした思いさえあれば、そこから学び、実践できることは多い。
 
友人の精神科医斎藤環がいった言葉がある。臨床の仕事と評論活動、大変だろうから、そろそろ評論活動に仕事をしぼったら…といったときだ。「臨床の現場から教えられることは多いんです。ぼくが評論や論評ができているのは、患者さんたちと日々ふれあう中から生まれているものが原点にある。それを捨てることはできません…」
 
齋藤環の確かさはそこにある。