秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

束の間に悲しみをいやす…

悲しみのない、大きな空へ、飛んでいきたいなぁ…と歌っていたのは高校生の頃だった…。
 
まだ、その頃、地方ではそれほど知られていなかった、赤い鳥というバンドの「翼をください」という歌だ。たまたま、初の福岡公演のライブにいってハマった。当時、音楽ライブは、地方では、一日だけの公演か、数日の公演程度だったから、新鮮なバンド情報をなまで得られることは少なかった。
 
感動したオレは、譜面がまだ市販されていなかったので、コードを探り、何度か練習して、コンサートの一曲に入れた。最初、歌った時から、観衆がぐっと引き寄せられているのがわかった。初めて聴く人も少なくなかった。それが数年後、音楽の教科書に載るようになるとは予想もしていなかったけど。
 
芝居でも音楽でも、ライブの作品というのは、始まって数分で、出演している方は、観客がこちらを見てくれているかどうかが、すぐわかる。きてるな…というときもあれば、あれれ、ひいている…ということもある。
 
大方、物事の成功や不成功というのは、そんなふうに最初のスタートラインのところで決まってしまうように思う。あるいは、出足はいいかんじでスタートしながら、どこかで怠慢さや疲れやモチベーションが落ちて、ダメになってしまうことが起きる。しかし、それも、スタートラインのところで、最後まで走りきる内実ができていないからなのだ…
 
悲しみのない、大きな空へ、飛んでいきたいな…と思いながら、だから、人は、自分の心の弱さやほころびから、いろいろな過ちや失敗や誤算を引き寄せてしまう。
 
そして、澄んだ空をもとめながら、その過ちや失敗や誤算が引き寄せた悲しみを抱きながら、暗い酒場で、こんな歌を聴くようになる。
 
悲しみのない、大きな空を飛び続けることはできない…それでも人は翼を求めて、また翼がえられると信じたくて、束の間に、悲しみをいやす。