秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

二つ三つのことを同時にやれ

被災地の支援取材を続けながら、オレは、常にZ1のカメラを携帯していた。それは、うちの自主作品の制作のため。
 
一つことをやるときに、二つ、三つのことを同時に一緒にやれ。
 
そう教えられたのは、大学浪人時代バイトしていた福岡ビル屋上のビアガーデンのボーイのときだった。
 
かき入れどきになると、大挙して団体客が次々に押し寄せる。その中で、客の帰った後のテーブルを片付け、残飯を捨てて、また戻り、新しい客のオーダーをとる…といった悠長なことをやっていたとき、班長の先輩からそう叱られた言葉がその後、ずっと頭に残った。
 
オレは基本的にむっとすると燃える(笑)。こんちくしょう…とがんばる。で、まず、髪を短く刈り上げ、先輩たちのようにやくざな風貌になった。気合だ。それからまたたくまに、その年の新人バイトの中で、トップのオーダー処理ができるようになった。
 
店長はほめてくれて、2ヵ月ほどで副班長になった。だが、叱った先輩は、それでもほめてくれなかった。それどころか、「お前、大学はどうするつもりだ。こんなこと続けていたら目標にしている大学なんて、とても受からないぞ」とまた叱られた。
 
どうやら、先輩も目標にしていた大学があったが、このバイトを続けるうちに、進学への熱意が薄れ、地元の福岡大学にしか入れなかったらしい。その体験を聞かされた。「そうなっていいのか、お前…」。参った。
 
そして、先輩は続けた。
 
「一緒にいくつものことをやる。それは大学受験だって同じなんだ。いや、社会に出てからも同じさ。ここでお前が身につけたことは、きっと役に立つ。だから、いまは、必死で目標を目指せ。お前が身につけたことが役に立つようにな…」

それからすぐ、オレはバイトをやめた。挨拶にいったとき、やはり先輩は笑顔はみせなかった。しかし、こういう甘やかさない人に出会えてよかったと思った。
 
あとで知ったが、オレの人生を変えるほど影響を受けた高校の演劇部のOBがその先輩と予備校時代一緒だったらしい。オレの進学を心配して、高校の先輩が、その人にオレがバイトをやめるように説得してくれと頼んでいたのだ。
 
ビヤガーデンのホールには、いつも当時ヒットしていたテレビドラマのテーマ曲が流れていたような気がする。自分の道を進むべき方向に進められず、悔しい思いしながら、ジョッキを10個も運んでいた。
 
それがオレの人生ではない…そう諭してくれた先輩たちにオレは恵まれた。
 
一つのことやるときに、二つ、三つのことを同時にやれ…。それはそれからのオレの仕事のやり方の基本になった。
 
が、しかし…。歳を重ねてくると、抱え過ぎて失念して三つのうちの一つを忘れたりする(笑)
 
昨日の撮影でも宣伝用の写真をとるのを忘れてしまった…。忙しい…はいいわけにはならない。思い出せ、あのときのオレ…