秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

上を向くのではなく、下を向け

宅配の回収が午後3時までになっている。急ぎの配送は期待できない。
 
ということで、東映本社にうちの商品を届けにいく。急ぎでお願いします。そうあったからだ。被災地でない地域では、いままでと同じ日常を送っている。いや、送ってもらわなくてはいけない。そうしてもらうために、不具合はあっても、それに応えるように工夫して動くのがビジネスというもの。
 
東映本社に納品して、いったん事務所にもどり、ランチをすませて、前日MAをやったショートムービーの音源とマスターテープを持って、代官山のスタジオへ。これも宅配便が使えないから。相変わらず東横線は昼間は各停のみ。
 
階段の上り下りで、いい運動になる。が、これは高齢者にはつらいだろうといま立ち上げようとしている支援事業のことが頭をよぎる。
 
事務所にもどり、一息つく間もなく、NPO法人立ち上げの会議資料をつくる。前回、大まかな趣旨説明と顔合わせを兼ねた懇親会をコレドでやって、2回目の会議は、うちのオフィスでやることにしていた。
 
丁度、タイミングよく、前日、仲間に引き入れようと考えていた、格安旅行会社社長のKが、なじみの美容師とコレドで飲んでいるときに連絡をくれた。マレーシアから戻ってオレに会いたかったらしい。丁度よかった。で、おおまかな説明をしていたのだが…奴は、やはり呑み込みが早い。
 
今日の会議も仕事で出られないからと、大手新聞社にすでにネゴをつけて、報告してくる。実は、最初から奴の行動力に期待していた。
 
夜、その報告も含め、午後7時から9時半まで会議。赤坂で会社を経営するKといつものように白熱教室。会議が終わって、ハンナに顔出す。今度はそこで、延長の白熱教室とAさんと政治議論。歯に衣着せず、激烈にやる。
 
ハンナはこういう議論のときにいい。客もいないが、ばばあがそれを許容できる腹ができているからだ。高齢とはいえ、元農水省内閣官房秘書室、地酒を通して社会を支えた有力者の若い頃の姿を見ている。政治にも、世の中にも一家言ある。
 
ま、端から見えれば、学生の集まりのような議論に見えただろう。しかし、オレには意図がある。Kさんは、オレたちブッティスト仲間の地域活動では、そう遠くないうちにリーダーの役割を担う。Aさんは、区議で終わらず、将来国政を目指すだろう。この二人の意識にいまだからこそ、打ち込まなくてはいけない楔がある。
 
そう遠くないうちにオレのようなロートルはここにはいなくなる。彼らがこれからをどう生きるかは彼らの自由だ。しかし、この世の中の現実を深く理解しなければ、与えられ、期待された使命感をまっとうすることはできない。
 
今回の震災は、震災という自然の猛威では終わらない…とオレは考えている。この国の制度、しくみ、あり方を根幹から変えることになる。そうしなければ、国難ともいえる現状を越えていくことはできないし、また、幸いにして生き延びたものたちには、よりよい国に変えていく使命がある。
 
いままでの常識、これまで当り前と思い込もうとしていた歪んだ国のあり方、それは都市と地方との関係、生活者の意識の問題も含めて変えざるえない状況が生まれている。どの政党、どの企業、どういう立場…そうした意味さえなくなってくる。
 
その多くの教訓をこの震災は与えている。
 
だから、ここでは、おざなりな会議や議論をする気はオレにはない。厳しいといわれようが、独断といわれようが、激烈といわれようが、オレの思いをぶつけることで、奴らにはいまよりはもっと広い視野、豊かでやわらな見識をもってもらいたい。
 
事実、普段無口なTくん、俳優座のMくんは、それをわかっている。自分より年下の世代や連中に見えているものが見えていないということは、彼らが、まだ古い、終わってしまった価値観に縛られているからなのだ。そこからは、次の時代を生きる連中に届くメッセージは生まれてこないし、自分たちが向き合う世代に支持されない。
 
そればかりか人々にとってよりよきしくみをつくることなどできはしない。
 
上を向くのではなく、下を向け。これまでの常識から自由になれ。人々の心の奥にあるものを見透かす透徹した眼を持て。若い世代が共感できる言葉を持て。それに見合う見識を持て。そして、いま以上に深い愛を持て。
 
なぜならなば、君たちこそが、次の社会のリーダーとなり、人を育てる立場となる人だからだ。