秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

消えない足跡

お彼岸に入り、青山墓地周辺は、墓参りの人でにぎわっている。
 
線香のただよう昼間の墓地の風景は、なぜだか心が落ち着く。おそらく、亡くなった方への思いを胸に、普段とは違う清楚な気持ちで墓を訪れる人々の心が、辺りの空気を変え、浄化されたようなさわやかさを呼ぶからではないだろうか。
 
生きている間は、あれこれ対立もいさかいも言い合いもしたかもしれない。心配したり、心を揉んだかもしれない。普段は、自分の先祖や身近な人へ手を合わせることを忘れているかもしれない。
 
だが、そんないろいろなことを越えて、やはり、改めて、ありがとうをいいたい。ありがとうというしかない、いろいろな思いをかけてもらった。そんな思いが辺りに溢れている。
 
駐車を待つ車の列も、渋滞したイライラより、たおやかな時間が流れ、おだやかに列に並ぶ姿のように、オレには見えた。
 
いまの世の中、だれもが、事を急く。結論や成果をすぐに求める。
 
なにが不安なのか。なにを怖れているのか。なにに向きになっているのか。いや、なにを忘れようとしているのか。いまの世の中、だれもが半径3メートルの世界で、ひとつことに夢中になることで、なにかから逃げようとしているようにしか、オレには見えない。
 
せかせかと、せわせわと生きたところで、人が一生の中でできることなどたかが知れている。地に足をつけて、自分のまわりにある現実にきちんと向き合い、歩むことでしか、人は足跡を残せない。
 
飛び跳ねるようにして、あいまいな、方向の定まらない足跡を人生に残すのか、それでも、しっかり大地を踏みしめ、確かで、後世のだれかにつなぐ、足跡を残すのか。
 
人生は短い。だが、一瞬では終わらない。どんなに短い人生でも、足跡を残す人生は、その一分一秒が濃く、長い。