孤独者、横浜に拉致される!
映画の企画の事前取材で、某財団法人に聞き取り調査に向かい、あれこれ人や団体を紹介してもらい、夕刻、事務所に戻る。
事務所に戻り、ウォーキング用のジャージに着替えようとしていると、村娘から連絡。
乃木坂へ向かう途中、信号待ちでタクシーにオカマをほられたらしい。なぬぅ
前々から奴の運転を心配していたが、自分に責任はないとはいえ、事故は事故。
実は、村娘を鍛え、ついでにオレの妊娠三ヶ月の腹を凹ませようと、昨日、朝とは別メニューの夕方のウォーキングを復活させる予定だったのだ。
が、しかし。あいにくの雨。まして、かるい事故だったといえ、ショックを受けているだろう…。雨の中、現場検証に立ち合い、震えているだろう…。と、仏心が出た。「雨でもあるけ!気合だ!」と、奴に、厳しくムチを入れることができなかったのだ。
が、しかし。そのオレの甘さがよくなかった。
奴は、お嬢にありがちな、わかりやすい、白で統一されたウォーキングファッションできたのだが、それをちゃっちゃと着替え、寒いを連発する。うちのカフェじゃなく、奴の好きなカフェにでもいって、温まるか…と油断した。
すかさず、「江ノ島のカフェいこう!」。うむむ。オレは、江ノ島という言葉にむちゃくちゃ弱い。ショックを受けているのだから、それもいいかと合意する。が、奴の車で向かっていると、よく聞けば、そこは江ノ島でなく、七里ガ浜。うぬぬ
ま、それでも湘南だし、いいか。と思っていると、「そうだ、横浜の倉庫街にもある!」。ソンチョウどっちがいいと聴きながら、奴の気持ちは明らかに横浜。で、横浜に拉致される。
子どもが小さい頃は中華街へもよくきた。だが、横浜シェラトンの仕事の関係で来て以来、横浜には来ていない。たぶん、4年ぶり。
横浜の風景は、なぜかなつかしい。実は、横浜の街の風情は、福岡とよく似ているのだ。港町だということもある。海外の文化が入り、ファッショナブルだということもある。独自の都会文化を持っていて、共通点が意外に多い。
拉致されたとはいえ、奴がよくいくというカフェ。これがなかなかいい お薦めだというスクランブルエッグは絶品。やはり、どこか育ちのいい村娘。うまい場所を知っている。
村娘は、何か勘違いしていて、オレがこじゃれた店は嫌いだと思っている。「ソンチョウ。蕁麻疹とか出ていない? むず痒くない?」と、オレが居心地が悪いのではないかと気を遣う。
たぶん。奴は、勝手にオレのイメージをつくっている。
足がちぐはぐで、ガタガタするテーブルと、少しケツが痛くなるような硬い椅子に座り、スルメをかじりながら、深々と雪の降る、客のいないうらびれた駅前の食堂で、一人、熱燗をコップ酒でちびちびやっているイメージ。
当然、BGMは、八代亜紀の♪スルメはあぶった方がいい~の「舟唄」。うるさい客がいると、飲み差しのコップをドンとテーブルの上に叩き付け、周囲を威圧する(爆)。
それじゃ、映画「駅」の高倉健だべ。確かに、あの映画はかなり好きだったが…。
そういえば、あの映画を付き合っていた女性と見に行った帰り、「あんなあなたとは付き合えない…」と別れられたことがある。あれは、オレじゃないのにぃ
だが、芝居をやっていた当時は、確かに、そういう雰囲気をかもしだしていたかもしれない(爆)。
帰路、これも奴がよく行くという、表参道と奴はいったが、明らかに神宮前のコテコテ昭和風&パリ風のカフェへ。「こっちの店の方がソンチョウ、落ち着くでしょ」。ま、そういうことにしといてやろう。
途中、孤独の話になった。村娘のママが、孤独に強い人はこわい、そういう人には近づかない方がいい…と、村娘に語ったことがあるそうだ。
深い。それに、たぶん、村娘のママは、そういうこわい孤独な男と付き合ったか、恋して、傷ついたことがあるのではないだろうか。と、ふと思った。
村娘のママは、おそらくただものではない。
あれこれおみやをくれる村娘に、御礼で、ママにもと茶席和菓子の専門店「塩野」の大福を贈っておいてよかった。
孤独者、宿敵に塩を贈る。