秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

前妻の夢

花冷えの続く昨日。
 
自主作品のできばえについて、意見をもらうために、お世話になっているKさんに試写してもらう。新作6本だから、それなりに時間がかかる。前後、途中に、今回の作品のテーマになっている事件や社会問題を語り、役者の演技について語り、映画やらレンタルショップ向けのVシネの企画やらをあれこれ語り合う。
 
Kさんと話していると、話が止まらないし、まったくひっかかりがない。Kさんの人柄だと思うが、Kさんには何でも語れるし、オレにとっては気取らない兄貴のような人なのだ。
 
その最中、もう16年来の付き合いになる歌舞伎町のS子から電話。上海に2ヶ月に一度帰国して、向こうで育てている息子の様子を見に帰っている。帰国する前、おみあげを買ってくるからというので、オレの好きな「金華ハム」を頼んでおいた。それをとりに、いまやっているスナックに顔を出すといいながら、出していなかった。
 
意外に知らない奴が多いが、だれもが知るプロシュートハム。その原点は、この「金華ハム」。かつて、ジンギスハーン、フビライハーンが世界制覇を目指した時、北は、レニングラード、西は、ローマまで、遠征を行い、略奪と陵辱を繰り返し、覇権を築いていた。その遠征にかかせなかったのが、この「金華ハム」。
 
そのままでも食えるが、スープもとれるし、ほかの食材の調味料にもなる万能食。それを征服された先の人々が自分たちの食文化に取り入れたのがプロシュートなどハム食。ジャージャー麺を主食とする騎馬民族の文化がパスタをもたらしたのもこの時期。
 
イタメシやスペインのイベリコがうんたら、わけ知りでいっている奴がいるが、金華ハムを知らずして、ハム文化を語るなかれ。
 
試写中で、折り返し連絡をいれると、上海で恋人とよろしやっている前妻が、見た夢の話。上海で二人は、よく会っている。Kさんの帰路に近いし、話の続きは店でと二人で立ち寄る。
 
16年前、S子とY子の二人ママで経営する歌舞伎町のクラブとの出会いが、オレの人生を大きく変えた。そこにいたのが、まだ、ファッションスクールの留学生だった前妻。水商売とはいえ、客に媚を売らない、上海女たちの気位の高さが気に入って、色気抜きで、客とホステスの関係ではなく、まるで、同級生のように釣るんで遊んだ。それが、40歳にして、高校生のような激烈な恋の始まりなるとも知らずに…。
 
なんでも、奴の見た夢というのは、なぜか奴が日本に帰っていて、オレと部屋でメシをしている。そこに、オレの日本の恋人(註:そんな奴はいないが)が現われ、ショックを受けて、彼女が自殺するという夢をみたらしい。それをS子に、日本に帰ったら、オレに話してくれと言付けたらしい。
 
なんで、その夢を見て、しかも、なぜ、オレに知らせておけといったのかがまったくわからない。
 
電話をして、その話は、逆だろう。オレと誰かが部屋で食事していて、それを見て、ショックを受けたのはおまえじゃないかと、あれこれしゃべていたら、途中で電話が切れた。あいつがキレたか、電波がキレたかは不明。
 
出会ったときは24歳だったが、奴も今年41歳になる。そろそろ結婚をしてもいい頃だ。この間、移転するときに、オレも卒業だから、幸せになれよとメールをした。奴も4年間は生活した場所だったからだ。
 
国境と言葉の壁は、言うほど簡単ではない。友人関係や仕事仲間のレベルなら、その壁は低くできるが、男女にあっては、時として、それは越えれらない壁にもなる。
 
奴には、女を愛することがどういうことなのかを手ほどきしてもらった。それには、いまも感謝している。
 
だが、どんなに互いがいとおしいと思っても、男女には、別れなければならない世界があることも、奴は、教えてくれたのだ。