秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ノーサイド

来年早々から撮影スタートになるかと思っていた、公民科の撮影が急遽、年内ということになる。

現役議員さんへの取材を柱とした作品で、先の臨時国会前後での収録を予定していたが、手配をお願いている担当者も忙しく、かつ、例の仕分け作業やなんやらで、なかなか段取りができず、来年1月25日からの通常国会辺りになりそうな気配だった。

しかし、予算編成のあと、予算案の攻防で、通常国会前は、返って、議員が忙しいという話になり、逆に年末の方が時間がとれるという話になったのだ。

で、バタバタと撮影スタッフに連絡をとる。年末も残すところ二週間を切って、撮影が二日も入る。来週末には、東映の関連で、行政団体のコンペ作品のプレゼンもあり、年明けからは、コンペが通れば、台本制作がスタートする。

同じ時期に、4月までに完成させなくてはならない、自主作品の台本制作に入らないといけない。時間が少ないことを考えると、撮影済みの自主作品の編集を年内に終わらておかなくてはいけなくなった。

今年の年末、そして年明けは、これまでにない忙しさ。来年リリースの自主作品を3タイトル、計6本という、うちの会社にしては異例の規模にしているせいもあるが、4月までは、怒涛の制作になるだろう。

同時に、東映に提案している映画企画についての詰めの作業や別の企画作品の取材や本書きも進めなくてはいけない。

しかし、願いが少しずつ実現していく中で、忙しく仕事をするというのは、さほど苦にはならない。

ラグビーの試合展開でよく言われることがある。最近は、試合中でもテレビ放送や競技場の液晶画面では、試合状況のいろいろなデータが表示されるのだが、昔からいわれていること。ラグビーの試合で、重要なのは、「ボール支配率」。

攻撃、もしくは防御のコントロールが、自軍のイニシアティブで動いているとき、勝敗を示す点数で劣勢でも、試合が終わってみれば、ボール支配率の高い方が、基本的に試合に勝てる。つまり、ボールを持つ時間が長いチームの方が有利だということだ。これはフォアードのスクラム戦で組負けしていない証。

人生でもよくあることだ。

自分のイメージや自分たち集団のイメージトレーニング通りに、仕事や恋愛、人との関わりが進んでいるとき、ストレスがあっても、人は、それほどストレスを感じないでいられる。

しかし、自分のイメージもなく、あったとしても、それが逆に、他者、たとえば、得意先や顧客、上司、片思いの相手など、自分と違うイメージを持つ相手に支配されると、同じ知力、体力を使いながら、極度にストレスを感じる。

もちろん、すべてが自分のイメージ通りに進まないのが世の常だが、こちら側の仕掛けができているときは、イメージが跳ね返されても、また、別の抽斗から、A案ではなく、B案、B案がダメなら、C案と、臨機応変に違う手が打てる。

場合によっては、時期を待つというゆとりも生まれる。それができるのも、ボール支配率、つまり、イニシアティブがこちら側にあるから、パニック状態にならず、冷静沈着な判断と行動ができるからなのだ。

それを可能にするには、イメージがあるということ。作戦や戦略を持ち、ストレスの強い状況で、へたりそうになっても、それを乗り越えられる確信を持つことだ。

そのためには、自分の心の鍛錬がいる。困難に直面したとき生まれる、失意からの愚痴ではなく、失意を招いた要因を分析し、問題点や欠陥、自分のどこに弱さがあったのかを謙虚にみつめ、どうすれば、同じ過ちをしないで済むかに気づき、それを克服するための知恵を生み出すことだ。

同時に、仲間や周囲の人間を信じ、かつ、立ち向かうべき相手や課題を、自分を成長させてくれる糧として、尊敬し、感謝できるかにかかっている。ラグビーの試合終了を、ノーサイド!(敵味方なし)と叫ぶのは、この精神に由来している。

昨日、コペンハーゲンで開催された炭素削減の世界会議、COP15。結果は、法的規制もなく、拘束力もない、採択ではなく、承認という形で閉幕した。緊急を要する環境問題ながら、地球的規模で、多民族、多国家が、経済発展と環境問題をどう両立するカの中でのエゴのぶつかり合いだった。

それを停滞や後退として批判するのはたやすい。しかし、エゴをぶつけながらも、どこかに一致点を見出し、次への布石とする知恵の方がはるかに大事だ。いますぐにという結論を人は求める。それができることは理想だが、その理想を実現するには、それぞれのエゴを克服する鍛錬と知恵をもっと互いに鍛え上げなくてはできない。

それはラグビーのように、いくつもの攻防戦を繰り返し、チームイメージをすべての選手が共有し、All for One,One for Allの信念を共有しなくてはできない。その先に、初めて、ノーサイドは見えてくる。