秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

尽くす喜び

昨夜は、女優の内田の芸能花伝舎が主催する、本読みワークショップの事前稽古をやる。

芸団協が母体なので、地道に芝居をやっている演出家や俳優の参加者が多い。そうしたところで、ワークショップを通じて技量を磨くのは、糧になる。とくに、きちんとした訓練を受けていない役者にとっては、貴重な体験だ。

また、回を重ね、参加することで、横のネットワーク、縦のネットワークも広がるだろう。仲間内の素人芝居のネットワークを広げるより、何倍も有益だ。技量を磨くということに、真摯な連中が集まるからだ。

しかし、だからこそ、事前に準備し、自分なりの役づくりをしておくことは大事。そのイロハの勉強をささせるためだ。だから、内田には、あれこれ、課題を出していた。

脚本が描いている時代背景や衣裳、小道具、髪型。脚本に登場する役柄の職業や団体などなどを事前に調べ、きちんとした知識を身につけておく。脚本家が描こうとしている空気感、人物像を具体的にイメージする。イメージできなければ、とりあえずは、身近にいる人間の中から、それに近い人を見つけ、その言い回しや所作を盗む。

つまりは、まず、形から入る。それを事前にきっちりやっておけば、ワークショップの場で戸惑うことも、あわてることもない。感情表現は、後からついてくる。まずは、形。

内田のために、あれこれ時間は割いたが、これを機会に、内田には、、語り、セリフ回し、表情、演技が一回り大きくなるように努力してほしい。内田自身、自分で図書館に足を運び、資料を当たり、身近な人間から、情報を得る努力をしている。

やっと、俳優業らしいことを始めた。仕事のないとき、自分の思うような役に出会えないとき、こうしたことを地道にやっていれば、必ず、どこかで、その努力が報われるときがくる。

一番問題なのは、舞台に出ることだけが、俳優の仕事だと思い、見聞を広めるためだと、仲間内で遊びほうけ、日々の努力をしないとだ。映画や舞台を見に行くというのも、大事だし、舞踏や何かの芸を身に付けるということも大事。

いい役者になりたければ、軽薄に、無為に一日を過ごすことはできない。

それぞれにあれやこれや、取り組んではいるが、長部、赤沼、塩原、神川といった役者たちにも、もっと
学習と訓練ができる場を与えてやらなくてはいけない。そのまま埋もれさせては、もったいない。

ささやかだが、それが奴らにしてやれるプレゼントになればいい。

内田と事前稽古をやっていたら、ハンナのばばあから電話。数日前、ばばあを通して、彼女の知人に、オレの行き着けの歯科医を紹介していたのだが、プロトコールの説明に、医師が2時間もかけて、丁寧に説明してくれたらしい。

その本人も娘もいたく感動したらしく、くれぐれもよろしく伝えてくださいと、ばばあが電話してきた。

オレの言葉を信じて、知人に紹介したばばあも嬉しかったろうし、オレもよかったじゃないと嬉しかった。オレ自身、インプラントの手術を逃げて、ちょい不義理をしているので、医者には、その埋め合わせがてきてよかった。

金にならなにことばかりやってはいるが、内田にせよ、ばばあの知人によ、よかった、前向きになれたという言葉を聞くと、心地いい。

人は、自分のためでなく、ささいなことでも、人のために尽くすことで得られる喜びがある。