秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

執着

ナレーターのKとRedに行く。

ダイエットで酒をセーブしていたのだが、昨夜は、長い付き合いのナレーターのKと、奴が所属する芸能プロダクションの女性社長Oさんと飲みの約束をしていた。直前になり、Oさんが体調を壊したということで、Kを連れてRedに。

プロダクションを設立して、もう30年近いらしいが、弱小プロということで、俳優の養成や営業など、あれこれ課題も多いらしく、たまたま事務所に移籍したKとオレが長い付き合いということで、奴からOさんを紹介された。そのときのオレの話が気になったのか、プロダクションでワークショップをやってくれないかという話。もちろん、オレの作品のオーディションにも声をかけて欲しいという依頼。

秀嶋組は、基本、中高年俳優さんの場合は、「希楽星」。中堅俳優は「ユニビジョン」系列。若手は、「サンミュージック」。それ以外を「劇団東俳」「東映アカデミー」「放映プロダクション」「宝井プロ」。ナレーションは、わが国、トップレベルのナレーター集団「シグマセブン」と決まっている。

それ以外の著名俳優へのオファーは、オレと大学が同期で、同じ歳の東映東京撮影所の大物キャスティングプロデューサーFさんの力を借りることにしている。

あまり入り込める余地はないのだが、未知の俳優を観るのは、無駄ではないし、オーディションに参加させるくらいなら、オレの独断でできる。それに、8月の官公庁のコンペが敗北したので、時間のゆとりもできた。社長のOさんの体調がよくなったら、改めて打ち合わせをすることに。

昨夜のRedは、Oちゃん、イガ、トモ、葛西の女、少し遅れて、ベティ、ネーリストのKさん、ヒロ。常連のハマ、カリスマがいれば、そろい踏みというところだった。Ryokoにも声をかけたが、またもや体調でも崩したか、連絡がなかった。奴は、急遽、住居を移転しなければならないことになったらしく、帰省していた岩国からトンボ帰り。マンション探しに走りまわっているらしい。

官公庁のコンペは、東映社内でもオレの企画を見て、期待もあったし、制作金額も大きかったから、残念がっていたが、実のところ、ほっとしているところがある。

もし、通っていたら、この8月はシナリオハンティングで全国を飛び回らなくてはいけなかった。滞っている映画の台本や小説、酒豪編集者との書籍の企画など、本来やりたいと思っていることを棚上げにして、2ヶ月近くが潰れていたろう。

それを思うと、金のことより、自分らしい作品づくりのための時間をもらえたことがありがたい。会社的には、いろいろと問題もあるが、オレがやるべき仕事ではないという天からの啓示のようにも思えるのだ。のんびりはしていられないが、あれこれくやむこともない。先々のことはなるようになると考え、いま、自分が取り組まなければならないことに、ひたむきになることだろうと思う。

今日、いつものボランティアを終えた昼過ぎに、Kから昨夜の御礼のメール。

奴は、もう40歳を過ぎた。が、ついこの間、またも、おバカな恋愛をして、都合のいい女状態にされ、それに気づきながら、男への執着から、またも、おバカな都合のいい女をやってしまった。それだけ、遊ばれて、ようやく、目覚めてきたいというところ。「17、8の女子高生じゃねぇんだぞ!」と叱り付ける。

奴が26歳頃からの仕事の付き合いで、折々に奴の恋愛相談に乗ってきたが、とにかく、男を見る眼がない。前の男は、別れる際にストーカーになり、大変な騒動になっている。執着から自由になれと諭す。

このブログで何度も書いているが、人が自分の品格を失ったり、不安や怖れといった不安定な感情に導かれる大きな要因は、ただひとつ、執着だ。

この仕事がうまくいかなかったらどうしよう。ここで自分の評価が落ちたらどうしよう。あの人を失ったらどうしよう。何かを自分の思い通りにしたい。だれかを自分の好きなようにしたい。結婚生活でも、恋愛でも、子育てでも、仕事でも、他人との関係をこじれさせ、きしみを生むのは、この執着だ。

執着ゆえに、おバカな行為だとわかりながら、流される。執着ゆえに、相手の不快や愛想笑いの裏にあるものに気づけない。我執にとらわれ、周囲や他人の気持ちが見えなくなり、結果、孤立無援となってしまう。その不安がさらに、何かへの、だれかへの執着となる。つまり、物や人への依存的傾向が強くなる。

そういうオレも仕事のしくじりや、仕事がなくなるといったときに、目先の不安や心配ばかりにとらわれ、慌ててあれこれやり、人を傷つけ、自分を傷つけ、土壷にはまるということをずいぶんやった。今回のような大きな仕事を逃すようなことがあると、かつては、相当に慌てていたと思う。

しかし、物事はとらえかたひとつ。視点を変えれば、失敗や挫折、おバカな行為も違った学びへ導いてくれる。物事には陰と陽、光と影がつきもの。大切なのは、影から何か前へ進む知恵と行動を学びとることだ。それを繰り返していくことで、頼りない自分の道が見えてくる。

自分を大事にすることだ。自分を大事にできない人間は、他人を大事にすることもできはしない。
自分を愛することだ。自分を愛せない人間は、他人を本当に愛することはできない。