秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

理想と夢を語り続ける

昨夜は、BSで『ザ・ダイバー』を観る。

前日、久しぶりに物書き・絵描きの卵のMちゃんとRedでメシをし、朝の4時近くまで事務所で、はたまた、教育的指導と説諭。さすがに疲れた。同じことを繰り返し、伝え、諭すというのは、やはり、エネルギーがいる。それに彼女は夜型。夜に強い。こちらは歳のせいで、すっかり朝型。夜に弱い。

昨日は、官公庁のプレゼンで、昼から東映でプレゼンリハをやる。心配性のCプロデューサーはプレ開始2時間前に設定していたから、すんなりリハができてしまい、ランチをして時間を潰す。銀座で新店舗を出した、盛岡冷麺の「ぴょんぴょん亭」。辛い! が、うまい! 次回は激辛に挑戦したい。実は、オレは、無類の辛いもの好き。ここのは、それに味が上品。女性客でいっぱいなのがわかる。それに辛くない麺も用意してある。

気がつけば、同じビルの別フロアに、あのBerry Cafeが入っていた。実は、1Fは、DIESIEL。これは、今後、オレにとって、ヤバイ。

二人して官公庁へ出向き、プレゼン。終わるとどっと睡魔と疲れが襲う。なにせ、先週末からなんやかや、飲み続け。量もかなり飲んでいた。その間に昨日のプレゼンの準備で、仕事量はたいしたことないが、気が張っていた。

飲みが続き、睡眠が不十分になると、これが眠れない。で、たまたまの映画を観る。

ジョージ・ティルマン・JR監督。主演、キューバ・グッティング・JR。助演、ロバート・デニーロシャーリーズ・セロン、アンジャーニュー・エリス。

アメリカ海軍で初めて、マスター・ダイバー(最高兵曹長)となった黒人兵士の話。黒人の貧しい小作人の家に生まれた少年が、素もぐりが得意だったことから、海軍に憧れ、入隊する。戦後まもない頃、まだ
黒人に選挙権もない、差別の時代。その中で、海軍の花形部隊、潜水部隊への入隊を希望し、激烈な差別意識を持った、ロバート・デニーロ扮するマスター・ダイバーや同輩兵士たちに理不尽な差別を受ける。

訓練基地の最上級将校は、どんなに本人の能力が高くても、自分が司令官であるうちは、合格させないとあらゆる妨害をデニーロに指示する。しかし、彼はその差別一つひとつに抗弁しない。自分の実績で白人を見返そうと努力する。最終の潜水試験で、分解されたパイプを組み立てる。しかし、必要な工具を海にバラまかれ、9時間以上も冷たい海で、命がけで組み立てを完遂する。

その姿に、デニーロ始め、これまで差別していた同僚たちも、彼に尊敬と敬意を払うようになる。デニーロの崩れたやくざのような奔放な演技とそれを支えようとする美形の超年下の、まだ、デビューしてまもない頃のシャーリーズのからみがいい! そして、やがて、デニーロ扮する男は、黒人兵士を育てたことを自分自身の誇りとしていくのだ…。

黒人兵士を支えていたのは名誉。自分の人間として名誉。矜持だ。原題は、Men of Honor。日本流に訳せば、武士の一分といったところ。差別や試練の中でも、失ってならない男の矜持であり、人間としての名誉がある。そのためにはいのちをかける気概だ。

アメリカ映画を観ていて、いつも凄いと感心するのは、こうした黒人差別や社会的に疎外された人間の悲惨な現実と、それでも、差別や社会疎外がいけないことであり、それは乗り越えられるという理想と夢を語り続けていることだ。

現実は、決してそうではないし、乗り越えようとして生易しいものではない。不条理に溢れている。

しかし、現実に照準を合わせ、悲惨さや世の矛盾、理不尽さを描き、あきらめるのではなく、こうした差別や人権を侵害する行為はいけないことであり、それが恥かしいことであり、乗り越えていかなければならない、白人、人類の課題でもあるのだと語り続けている。

差別にしても、反戦にしても、社会の仕組みのおかしさにしても、どんなに派手なスペクタクル映画や娯楽映画をつくっていても、必ず、数年に何本か、こうした作品を生み出し、そこに、ハリウッドのトップ男女優が出演する。

それは、彼らが民主主義の大切さと、が、しかし、普段の生活の中で、それが守られていない現実を知っているからだ。

民主主義はひとつの理想。それを現実に実現するためには、こうした映画のように、いつもどこかで、連呼し続けなくてはならない。人が理不尽に不幸や試練の襲われる社会の現実に声を上げ続けていなくてはならい。

いよいよ総選挙といういま、自公がどうの、民主がどうのと批判合戦と自分が正しいの他者批難が始まっている。争点を明確にすることは大事だ。だが、必要なのは、社会の現実をしっかりと見据え、理想といわれようと、あるべき社会の姿、だれかが徳をする、だれかが悲惨を嘗めるという社会ではない、国民一人ひとりのために、理想を掲げ、夢を実現する、矜持と誇りを持った政党、政治家なのだ。

理想や夢を批難することは、だれにでもできる。
そんなことなど、実現することはできないと、笑うことは、だれにでもできる。
そんなことは、できはしないと、あきらめることは、だれにでもできる。
だが、社会を変える力、人々を幸せに導く力は、
どんなに困難や試練があっても、理想と夢を語り続けることだ。
理想と夢を信じ、行動する力だ。

その積み重ねの向こうに、理想と夢は見えてくる。