秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

遺言

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Red変態クラブ「水戸黄門チーム」オールスタッフ、オールキャスト!

物書きのMちゃんから、数週間前にコレドのMさんの奥さん、MKちゃんに貸していたDVDを受け取ってといわれていた。いつもお世話になっている御礼にオレにプレゼントしたいという。

昨日、東映との打ち合わせから戻り、厚生労働省の再就職支援プログラムのコンペ資料に目を通し、デザイナー仲間に参加するかどうか打診して、大方、今週できる仕事を片付けたところで、ふとそのことを思い出す。昼間、ロケハンで、暑かったから、ビールが飲みたくなっていたからなのだが。

で、映画好きのRYに一度連れていってやると話していたこともあり、同伴して久しぶりにコレドへ。が、MKちゃん、やはりDVDを持ってきていなかった。ま、いいかとRYとあれこれ映画の話をして、盛り上がっていると、MKちゃんが、ポツリ、財産なんてないから、遺言なんていらないわよね…。

オレも前から気になっていたのだが、年の差40のカップル。オーナーのMさんがいつポックリいくかわからないし、順番からいえば、まちがいないMさんが先に行く。かつては、シナリオライターやって、いまでも若干の印税は入るし、コレドは株主を募って運営しているから、Mさんに何かあれば、店の権利の奪い合いにならないとも限らない。余計なお世話だが、遺言ぐらい書いておいたら、と思っていた。

それがどういうきっかけかは知らないが、Mさんが自分から遺言状を書き始めたらしい。あの気の強い妹にMKちゃんがぼこぼこにされないためにも、その方がよい。いまなら、そんなふうに、バカ話にできる。その間に、きちんとやっておくことだ。財産があればあったで、もめるが、なかったらなかったで、また、もめる。結末は付くようにしておいた方が憂いがない。

ほどよく酔ったところで、一週間ぶりのRedへ。で、入るとびっくり。珍しく、イガ、ハマがいる。いや、いるのだろうが、オレが顔を出したときに、二人揃っているのは、久しぶり。トモ、ヒロもおり、人妻CHEまでいる。あれれ、これって、オールキャストじゃん。しかも、最近、由美かおる役を引き受けたRYも一緒だ。

みんな当然のごとく、ならば、出演者全員の記念写真を撮ろうと言い出し、悪役代官で町娘の帯を解く、Youにシャッターを切らせる。帯を解かれる町娘役は、この面子なら、CHEだろう。

そんな盛り上がりを見せていたとき、ベティから短いメールが入る。カリスマ美容師Iのオヤジが亡くなったという連絡。Iは、以前、焼鳥Yoshiでオレとオヤジさんの座談会やっているのを側で聞きながら、これからちょい親孝行しようと思っている、と話していた。やっと自然にそれができる自分になれた、ポツリそう言っていた。

不思議なものだ。子どもが親のことをそんな目で見れるようになった頃、親は逝く。昨日のブログの書き込みに、ハマがオヤジと最後の別れをしたときの様子を書いていた。気骨のある、いいオヤジだったんだなと、それを読みながら、思った。その別れの姿で、かえられない男の生き様を遺言している。

Iは若い頃、やんちゃもやっていたから、親父さんの死はこたえているだろう。Youから奴のメルアドを聞き、思いは伝わっているからと、それだけメールした。ハマもそうだが、ハマという人間の中にオヤジは生きている。Iだってそうだ。人は、親が亡くなって、改めて、自分の中にいる親を感じる。その感覚をしばらくは大事にすることだ。

ベティが短いメールしか送れなかったのは、Iを思ってのことだろう。Iは、丁度厄年の頃。いろいろな意味で、自分の人生はこれでいいのかと考えていた頃だ。そんな折に、オヤジと永久の別れをすることになった。おそらく、もっと深い人生を歩みたいと考えているIが、出会わなくてはないけない節目だったような気もする。

ベティも、Mちゃんも、RYも、オレの回りにいる連中の多くが、これからの人生をどう生きるかの節目のときを迎えている。人は別れから、多くを学ぶ。人との別れもある。それまでの自分の生き方、考え方との別れもある。人は、何かと別れないと、新しい道を歩み出すことはできない。

昔、JR東日本が発足した頃、流れていたテレビCM。
亡くなった尾崎豊の『I LOVE YOU』が流れている。
西日本のどこかの駅から、大学進学で、上京してくる、まだ、幼さの残る青年。
近づく東京の街を車窓から眺めている。
青年の脳裏に、出発のとき、母親がホームで列車を見送りながら、泣いて、立ちつくしている姿がよみがえる。
そこに、父親の声が穏やかに聞こえる。

「お前が捨てていくものの、重さがわかるまで、決して、帰ってくるな…」

人は、別れから新しい道を、人間を知る道を歩み始めるのだ。