秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

命短きワーカーホリック

この時期になると、成田から海外へ出発する人々の様子が、画面に流れる。
いわば、お決まりの時節物の報道ネタで、必ず、抑えておかなかければならない映像で、正月、お盆なども、恒例で、どこかで必ず、休暇を楽しむ家族やカップルの映像が流れる。

オレは、高校生の頃から、連休をどこか遠くで過ごしたという記憶がない。

高校生のときは、演劇部の部活で、連休はかっこうの稽古期間だったし、春夏冬の休み期間も、ほぼ演劇部の活動や、親睦会などにとられていた。大学浪人中は、その時期はバイトしていたし、大学生になると、今度は、劇団を始めて、その稽古で休みは潰れていた。

卒業しても劇団を続けていたから、やはり、芝居の毎日かバイトの毎日。結婚して就職しても、制作を立ち上げたばかりの会社で、2年間で休んだのは、わずか一週間程度だった。
やがて、休める立場になったかと思うと、今度はえらいさんになってしまったから、アクシデントや何か問題があったときに、すぐに対応できないといけないと、ぜいぜいゴルフのうちっぱなしか、近在で乗馬をやるくらししかできない。

で、今度は会社をやめて、また、寝る間も惜しんで仕事をし、経営や資金繰りのことであれこれ悩むうちに、とても遠隔地で休養することなどできなくなり、また、土日には教育シンポや講演などがあったから、ますます、連休中に休むなど考えられなくなっていった。

あれこれ、仕事を整理し、今度は、自分がいままで発表できなかった作品を、世に出そうと考え始めると、生活のための仕事とは、また別に、時間が必要になり、結局、連休のときは、仕事の打ち合わせも
止まるので、その間は、書き物をしたり、企画書を練ったりという生活になった。

オレは、心配ごとや気になることがあると、心の底からリラックスして、長期に亙り休むということが
できない。それに、長期に休んで、仕事や作品以外のことをやっていると、不安に襲われるのだ。

俗に、そういうのをワーカーホリックというのだろうが、映画や観劇、コンサートや食事、散歩といったことはしても、どこか遠くへ観光目的だけで、3泊も4泊もするというのは、まず、オレには考えられない。しかも、やることがない。

ステキな風景や建物を見たり、その歴史などを知ることは、キライではないし、オレは京都や奈良が大好きな人間だ。しかし、仕事のからみや仕事のついでにちょっと足を延ばす程度で、そうした観光やリゾートのために、どこかに出かけることをしない。海外も仕事でいっただけで、観光らしいことはひとつもしていない。

ま、ゆとりがないのだが、その暮らしが、15歳の頃から当たり前だったので、逆に、そうではないと落ち着かないのだ。

おかげで、オレと暮した女や子どもは、いい迷惑をしている。1泊旅行や河原でバーべキューなど、家族らしいこともしなかったわけではないが、子どもが小さい頃は、仕事の打ち合わせが入って、箱根の芦ノ湖から、東京に家族を追いて、トンボ帰りしたこともある。

たぶん、オレのオヤジは警察官で、退職直前まで、本当に休みなしで働いていて、そういうオヤジの姿を
見て育ったから、それが家族の普通の風景だと思ってしまったからだ。

オレは、どこかで休養するのは、自分がもう何もやれなくなってからでいいと思っている。
お金のための仕事、作品のための仕事、そして、ボランティアと、だれかのことを心配して酒を付き合い、たまに女子と映画や食事をする。その時間があれば、それ以上を求めない。

Mちゃんは、オレがいろいろ体のことで弱音を吐くから、オレのそんな生き方を見ていて、早死にすると
思い込んでいる。確かに、自分でもなんで、こんなにせかせか生きてしまうのかわらかない。

最近はゆとりを持とうと努力もし、運動とか散歩とかするようにしているが、それもこの数年のことだ。
もしかしたら、Mちゃんがいうように、オレはそんなに高齢まで生きられないと、どこかで予感しているから、いまもこんなにせかせかしているのかもしれない。

だが、せかせかした中で、ふと時間をとって、のんびりするから、逆にオレは、自然を楽しんだり、季節の変化を感じたりできているのだ。

せっかくの連休、ゆっくり休むのもいいが、オレは、酒豪編集者と二人でつくり上げようとしている次の
本の企画の最後の詰めに入る。それが早めに片付けば、かなしい小説にも手をつけたい。

仕事の方の状勢だと、連休明けからバタバタと撮影が入るかもしれない。その前にやれることは、やってしまいたい。

やっぱり、オレは、命短き、ワーカーホリックなのだろうか…。