この愚かな国 日本を救うもの
月曜日に 27日に自主制作作品の撮影の秀嶋組スタッフとの打ち合わせ会議をやる
会議終了後はオレの手作り鳥塩鍋と もう常連スタッフ連中はわかっている
今回は自主制作作品ということもあり 子役中心ということもあり ご意見番のヘアメイクHには参加し
てもらえない 予算調整のためだ
いままで音声を担当していたKもカメラマン北條の所属する会社から転職して 今回はうちの整音をやっ
てもらっていた 初参加となるTさんが音声を担当 こちらはリストラされたばかり 幸い再就職先はみ
つかったようだが まだ未払いの給与を支払ってもらえないらしい
うちの組では 監督ながら助監督をやっくれている米さんも別仕事 それほど利益にならないらしいが
世話になっている制作会社からの頼みで これからの仕事を考え 請けざるえなかったらしい
そこで Kに助監督として3度目の参加を要請 Kも最近単発の仕事しかないらしい
若手のアシスタント連中も 年度末 別の仕事で忙しく参加せず 今回はスタッフが多少いれかわり
人数もいつもより少ない
こちらの予算の都合もあり 仕事が薄くなっている連中の事情もありと
いかに この不景気で制作物が少なくなっているかがわかる
照明のSも今回は前払いでと頼んできた それなりに稼いでいるのに こちらはたぶん女とかなんとか
わけのわからないことに金をつっこんでいるに違いない
打ち合わせが終われば 酒というのが秀嶋組のルール ちょうどイガが息子の合格祝いにくれたマッカラ
ン12年があったから それをふるまう
ご意見番のHがいないから 酒に酔うとオレにからみながら オレの考えやねらっていることを学習した
がる 照明のSとオレとの討論会風になる まとをえているところもあるが ずれているところもある
が 必死でくらいつく奴の姿勢は いまの仕事でなく これからオレがやろうとする仕事には不可欠だと
いうことがわかっている 勉強したいのだ
ほとほどに食い いい感じに酔って解散
と思ったら Sが飲み足りない顔 で コレドに誘う
ちょうど 常連のマエストロSさんがひとりでのみに来ていて 久しぶりの再会
この間の試写会に参加できなくてすまなかったなという話にはじまり 戯言で盛り上がろうかと思ってい
たら 「どうなんだ? おまえ、仕事は?」と昨今の不景気で うまくやれているのかと心配してくれる
ありがたい
照明のSはもう酔っているから コレドの常連年輩にオレがからむがごとく オレにあれこれからむ
わかっている
オレに期待もしていくれているし もっとがんばってもらいたい もっともっといい仕事をオレとやりた
いのだ だから 奴が酔っていようが まともにオレも受け答えする
そんな様子を脇でみながら ふと マエストロのSさんが
「なんかあったら いってこいよな オレでできることは応援するから」といってくれた…
たぶん Sさんはオレの本当の姿を見抜いている
オレも人とあって人を見る力はあると自負しているが
自分のことをここまで見抜けている人は この歳になって 二人目
徳島県の仕事で担当だった バリバリ人権運動をやってきたAさん 同じように初見でオレを見抜き
以来 あれこれ心配し 監督は秀嶋でなければと買ってくれた人だ オレを社会派の監督として
メジャーにしてくれた人といってもいい
そういう先輩に遭うと きつく閉じている心がいやされる
この年齢になると 人の甘えを許したり 励ましたりする立場にはなるが 自分自身が逆の立場に立つ
ことはほとんどない
若い頃から これという師匠もなく 自分が進みたい道へ 一人で進み そこで決断し 一人ですべてを
仕切る生き方をしてきたオレには そうした心配してくれる先輩が少ない
だから なお Sさんの言葉が胸にしみた
マエストロという個的な仕事で世界に名をなした人だから
中途半端に稼ごうとか そこそこに生きられればとは考えず 本当の意味でいい仕事をしたいと願い
孤独に闘う奴のせつなさがわかるのだ
やりたい芝居 映画 そして書籍…
それをやりきるためだけに 残りの人生を費やそうと実は決意しているオレを さらっと見抜いていくれ
ている ありがたかった
Sさん ほんとうに ほんとうに ありがとうございます
その後 酔っ払った照明のSのタクシーに便乗して Mちゃんに会いに中目に向かっていたら 案の定
照明のS 途中で車を止めて ゲロ Sがオレに絡むときはいつもそうだ 懸命に背伸びしてからんでい
るから 深い酔いする 無理な酒を飲む あんぽんたんだ
だが オレもボロボロに酔って 火曜日は死んでいた
あれこれあった一月近く 酒豪編集者のRに渡さなければならない本の企画書にも手が回らず
27日の ある意味強行撮影が なんとかなると見えたこところで
ふと気がゆるみ 同時に また現場費の準備で金のことが頭をよぎり
かつ 来年の芝居で俳優座を使いたいという思いが
またまた資金集め 支援団体集めのための計画を練らなければならずと
マエストロSさんがオレを見抜いたような 不安もかかえ…
という状態だったからだろうと思う
だが オレにからむ照明のSやオレを励ましてくれる 何度かの面識しかないマエストロのSさんとの
こうしたふれあいがあることが ありがたいと同時に 何かを変えていく力はこうしたふれあいにしか
ないのだと改めて思う
政治や文学や芸術を語る知恵も 学習も必要だが 本当に大事なのは 互いの心を読み ささやかでも
人を支えよう 支えあおうという人間の 人のあたりまえの日常のあり方なのだ そのひとつひとつを
大事にすることなのだ
照明のSが 本当の意味でそれに気づいてくれたら と思う
幼児期 少年期に身体的なことで いじめに遭い つらい思いをしてきたSなら きっと それがわかる
世界を変える力は 勇ましい議論の中にはないのだ
会議終了後はオレの手作り鳥塩鍋と もう常連スタッフ連中はわかっている
今回は自主制作作品ということもあり 子役中心ということもあり ご意見番のヘアメイクHには参加し
てもらえない 予算調整のためだ
いままで音声を担当していたKもカメラマン北條の所属する会社から転職して 今回はうちの整音をやっ
てもらっていた 初参加となるTさんが音声を担当 こちらはリストラされたばかり 幸い再就職先はみ
つかったようだが まだ未払いの給与を支払ってもらえないらしい
うちの組では 監督ながら助監督をやっくれている米さんも別仕事 それほど利益にならないらしいが
世話になっている制作会社からの頼みで これからの仕事を考え 請けざるえなかったらしい
そこで Kに助監督として3度目の参加を要請 Kも最近単発の仕事しかないらしい
若手のアシスタント連中も 年度末 別の仕事で忙しく参加せず 今回はスタッフが多少いれかわり
人数もいつもより少ない
こちらの予算の都合もあり 仕事が薄くなっている連中の事情もありと
いかに この不景気で制作物が少なくなっているかがわかる
照明のSも今回は前払いでと頼んできた それなりに稼いでいるのに こちらはたぶん女とかなんとか
わけのわからないことに金をつっこんでいるに違いない
打ち合わせが終われば 酒というのが秀嶋組のルール ちょうどイガが息子の合格祝いにくれたマッカラ
ン12年があったから それをふるまう
ご意見番のHがいないから 酒に酔うとオレにからみながら オレの考えやねらっていることを学習した
がる 照明のSとオレとの討論会風になる まとをえているところもあるが ずれているところもある
が 必死でくらいつく奴の姿勢は いまの仕事でなく これからオレがやろうとする仕事には不可欠だと
いうことがわかっている 勉強したいのだ
ほとほどに食い いい感じに酔って解散
と思ったら Sが飲み足りない顔 で コレドに誘う
ちょうど 常連のマエストロSさんがひとりでのみに来ていて 久しぶりの再会
この間の試写会に参加できなくてすまなかったなという話にはじまり 戯言で盛り上がろうかと思ってい
たら 「どうなんだ? おまえ、仕事は?」と昨今の不景気で うまくやれているのかと心配してくれる
ありがたい
照明のSはもう酔っているから コレドの常連年輩にオレがからむがごとく オレにあれこれからむ
わかっている
オレに期待もしていくれているし もっとがんばってもらいたい もっともっといい仕事をオレとやりた
いのだ だから 奴が酔っていようが まともにオレも受け答えする
そんな様子を脇でみながら ふと マエストロのSさんが
「なんかあったら いってこいよな オレでできることは応援するから」といってくれた…
たぶん Sさんはオレの本当の姿を見抜いている
オレも人とあって人を見る力はあると自負しているが
自分のことをここまで見抜けている人は この歳になって 二人目
徳島県の仕事で担当だった バリバリ人権運動をやってきたAさん 同じように初見でオレを見抜き
以来 あれこれ心配し 監督は秀嶋でなければと買ってくれた人だ オレを社会派の監督として
メジャーにしてくれた人といってもいい
そういう先輩に遭うと きつく閉じている心がいやされる
この年齢になると 人の甘えを許したり 励ましたりする立場にはなるが 自分自身が逆の立場に立つ
ことはほとんどない
若い頃から これという師匠もなく 自分が進みたい道へ 一人で進み そこで決断し 一人ですべてを
仕切る生き方をしてきたオレには そうした心配してくれる先輩が少ない
だから なお Sさんの言葉が胸にしみた
マエストロという個的な仕事で世界に名をなした人だから
中途半端に稼ごうとか そこそこに生きられればとは考えず 本当の意味でいい仕事をしたいと願い
孤独に闘う奴のせつなさがわかるのだ
やりたい芝居 映画 そして書籍…
それをやりきるためだけに 残りの人生を費やそうと実は決意しているオレを さらっと見抜いていくれ
ている ありがたかった
Sさん ほんとうに ほんとうに ありがとうございます
その後 酔っ払った照明のSのタクシーに便乗して Mちゃんに会いに中目に向かっていたら 案の定
照明のS 途中で車を止めて ゲロ Sがオレに絡むときはいつもそうだ 懸命に背伸びしてからんでい
るから 深い酔いする 無理な酒を飲む あんぽんたんだ
だが オレもボロボロに酔って 火曜日は死んでいた
あれこれあった一月近く 酒豪編集者のRに渡さなければならない本の企画書にも手が回らず
27日の ある意味強行撮影が なんとかなると見えたこところで
ふと気がゆるみ 同時に また現場費の準備で金のことが頭をよぎり
かつ 来年の芝居で俳優座を使いたいという思いが
またまた資金集め 支援団体集めのための計画を練らなければならずと
マエストロSさんがオレを見抜いたような 不安もかかえ…
という状態だったからだろうと思う
だが オレにからむ照明のSやオレを励ましてくれる 何度かの面識しかないマエストロのSさんとの
こうしたふれあいがあることが ありがたいと同時に 何かを変えていく力はこうしたふれあいにしか
ないのだと改めて思う
政治や文学や芸術を語る知恵も 学習も必要だが 本当に大事なのは 互いの心を読み ささやかでも
人を支えよう 支えあおうという人間の 人のあたりまえの日常のあり方なのだ そのひとつひとつを
大事にすることなのだ
照明のSが 本当の意味でそれに気づいてくれたら と思う
幼児期 少年期に身体的なことで いじめに遭い つらい思いをしてきたSなら きっと それがわかる
世界を変える力は 勇ましい議論の中にはないのだ