Redの帰り
いつもの青山のRedにいったら イタリアのピサから出稼ぎにきているＡがひとり飲んでいた
Ａはシューズのマーケットリサーチをやっている奴なのだが 前頭葉から頭のてっぺんがテカテカで
いわば志村けんをもっとツヤツヤにした、いわゆる典型的、イタ公なのだ。ラテン系らしく、ぼくが冗談
でイタ公と呼ぼうが 約束を守れないラテン気質にきつい冗談をいっても、ノリと受けとれるところはさ
すが。
3ヶ月に1回、日本に出張に来て、その間、近くの廉価な会館に宿泊しているから Redは近く
ぼくら常連もＡとたまに会い、おバカな話から日本の政治の話まで イタリア人の現状認識の過ちを訂正
して、ちょいいらいらしながらもその会話を楽しんでいる。
中国とアメリカが対ロシア戦略で密接に結び付き 日本はアメリカのアジア戦略の枠組みからはずされな
いまでも重要視されなくなるだろとぼくがいったら 奴め ならば これからはＥＵと仲良くしなよとい
いことを言う
たしかに
フランスやイタリアのブランドや食材はこの国にかなり浸透しているが その文化や人的交流は希薄だ
アメリカ依存からの脱却の一つとしてそれはありえるし 昨日はアラブ首長国連邦のオイルを握る連中
が石油の取引の基準貨幣をドルからユーロに変えようかと議論していた
ぼくのＨＰの「今月の評論ＯＵＴ」の中でも述べているが アメリカの覇権主義や一国主義は 金融危機
と天然資源の高騰で ひとつの時代の終わりを告げようとしている
豊かな石油、天然ガス資源を持つロシアや先進諸国がのきなみ、成長率をマイナスにする中、いぜん、成
長している中国などの台頭は あたらな多極化の世紀の幕開けを象徴しているのだ
アメリカ依存から脱却するには 近隣アジア諸国との関係も大事だが 対アメリカ戦略という点でＥＵは
有効な外交の切り札になる可能性はなくはない
と またもやまじ 政治や経済 国際状況の話に花をさかせていたら おやおや 耳の調子がますますい
い 奇妙な圧迫感がなく これでなおかったかと思いつつ 乃木坂の事務所へ帰っていたら
なんと 前に紹介した ハンナのババアとばったり
前の記事で書いていたけど 最近 道でばったりはあるけど ババアからもらったバッグの御礼もあって
店にいかなくてはと思いつつ
ついつい コレドやRedの洋酒にひかれてしまうオレだったのだ
人は不思議なもので あの人はどうしているだろうとか あいつは元気かなとか ぼんやりだれかのこと
を気にしていると 意図していない何かの機会にばったり会ったり 突然 そいつから電話がかかったり
する 思いはふしぎに伝わるのだ
オレは別にばばあにほれてはいないが （Ｍさんち夫婦にくらべれば オレとババアの年の差は20そこそ
こだが オレには無理） ババアには 顔見にいってやらなきゃな なんて思ってるとばったり会うこと
が多い
ただ だからって 店にきてとか 最近来ないじゃない なんてうざいことはぜったいいわない やは
り 昔の日本の女はできている いわないから いかなきゃと いい男は思うものだ
今日 編集がおわったら いってあげよ
実は ババアはお嬢さん育ちで 昔 いまのミッドタウンにまだアメリカの進駐軍がいてＰＸなんて い
わゆる米軍の食料品や衣料雑貨、飲食店があった頃の六本木界隈で遊んでいた女で 遊ぶときにお金を使
ったことがないほど もてもてだったらしい
もともと農水省の役人、秘書をやっていたくらいだから ま 当時は相当いけていたろうし いま 話を
しても 勉強熱心だし それなりの考えをもっている が オレと同じで 下ネタを織り交ぜながら
会話を楽しめる人だ
最初に出会ったとき どこかおふくろと同じにおいがした
また おふくろみたいに 店にいくと 帰りに 天然塩だの 港区の融資案内だの 旅行のみあげなど
あれこれ くれる
いつか おふくろをつれて ハンナにいきたいと思っていた
そんなオーバーラップを感じるせいか ババアの様子や健康のことが気になる
10年前 はじめて店にいったときにくらべたら 確かに歳をとった
恋をしただろうが 一度も結婚せず 子どもなく ひとり店をやっている
だからって だれかに頼ろうとはしていない 施設に入ったときに介護され上手になりたいからと
介護士1級の免許までとってる
こういう気骨のある女が この国には少なくなった
写真は ババアからもらった 浮世絵生地のバッグ
こういうのをつくるのを趣味にしてる友人からもらったらしいが 受け取るときに浮世絵の
しかも 遊女柄で これはわたしは使えないわよ といった瞬間 オレの顔が浮んだそうな
秀嶋さんだったら使うわね きっと
で オレンジとブルーの二つをくれた さすがにオレンジは人にあげたけど
あのババアさすが ブルーのこれは気に入った
