秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

若者たち

テレビドラマ「若者たち」が放映されたのは、1966年から。俳優座映画部とフジテレビが共同制作する形だった。劇場公開はそのあとだ。配給は東映㈱。

私は高校1年のときに、1年遅れで、この映画シリーズの一挙公開を中州の東映で高校の演劇部の先輩たちと当時付き合っていた同輩の彼女とみた。
 
60年の安保闘争が終わり、高度成長へ向けて社会は驀進していた。地方から若い世代は流出し、貴重な労働力として都市へ吸収された。それでも、大学への進学率はまだ低かった。中卒、高卒で社会に出るのが当たり前の時代。
 
また、戦後の戦災孤児や遺児たちが青春期に差し掛かった時代でもある。
 
経済成長へ突き進む中で、多くの切り捨てや棚上げが生まれていた。戦後処理の問題、原爆被害者への補償問題、公害問題、米軍基地問題、不当労働行為の問題…そして、いつ海の向こうで朝鮮戦争が勃発してもおかしくないという不安が常にあった。
企業のコンプライアンスなど顧みられることもなく、かつ、生活格差、教育格差、民族による差別や偏見が当たり前のように日常にあった時代だ。

そして、66年から新たな学生運動全学連の動きが活発になる。社会の矛盾に学生が学費値上げ反対闘争などを経ながら、アメリカの公民権運動と連動していく。これが後の70年安保闘争につながっていく。

ある意味、当時の社会は、いまこの国が進もうとしてる新自由主義の姿に類似する。かつては国民の多くが中流という生活をめざし、獲得していったが、そこに社会から見捨てられて、切り捨てられていくものが多数あったのだ。

それが、いまは親たちが獲得した中流だと思っていた生活がそれ以下の生活へと逆戻りする現象が若者を中心に起きている。

どういう意図と背景、ねらいがあって、あの時代の社会問題をテーマにした社会派ドラマ「若者たち」をフジがリニューアルリバイバルするのかは知らない。だが、いま若者たちの抱える社会矛盾があの時代と類似している部分があることに制作者は着目したのだろう。
 
しかし、フジは、かつて「ひとつ屋根の下」で、同じように「若者たち」のリメークバージョンをやった。そこにいろいろな社会矛盾や問題は描かれていたが、本作ほどに切実なものではなかった。ラストもありがちなトレンディドラマの終わり方だ。

果たして、今回、フジ産経グループの傘下で、制作者がどのようなテレビマン魂を示すのか…お手並み拝見。