秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ある揺れ幅の中

センスや美意識、あるいは、美的感覚といったものは、視覚で磨かれる。
 
もちろん、センスのよさや美意識の高さ、美的感覚の鋭さといったものは、天性のものだ。なにに、それを感じるのか。なにをよしと感じるか。それは千差万別というようなものではない。
 
ある一定の普遍の法則の中に、それは置かれている。
 
あるのは、その揺れ幅の部分だけだ。古典にせよ、現代アートにせよ、工芸にせよ、一流といえるもの、共感のえられるものというのは、その揺れ幅の中に必ず位置している。
 
だから、千差万別といったあいまいな基準でごまかしていると、そうした感性は磨かれない。

ベルリン映画祭銀熊賞を受賞した『グランド・ブダペスト・ホテル』は、古きヨーロッパの美的世界とモダンとを組み合わせて、じつに美しい。だが、その美しい造形の中で批評性を失わず、コミカルにこの世の不条理を描いている。
 
俳優は個性派の名優ぞろい。物語は架空の国のお話。美術、アート担当者は超一流。舞台は、ホテル。物語に重要なファクターなる絵画と「メンドレ」の菓子…

とくれば、タイアップのしどころ満載。それも頷けるほど制作費をかけている。規模の大きさではなく、質の高さのためにだ。

その徹底した執着とこだわり。監督、ウェス・アンダーソンのそれは、これからの映画に必要なものを強く発信している。
 
今年、洋画はこのあと、いい作品がつづく。天才バイオリニスト、パガニーニの生涯を描いた「パガニーニ」。ニューヨークらしい作品には欠かせないウッディ・アレンが自作品以外で久々役者を演じる「ジゴロ・イン・ニューヨーク」。ポルトガルノーベル賞作家、ジョゼ・サラマーゴの小説を映画化した「複製された男」…

いずれもある揺れ幅の中にある作品。
 
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