秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

中通り紀行4 小さいから伝わる思い

練馬つづじ祭というのは、もう17回も実施されているらしい。そのこじんまりした祭に
茨城に近い、塙町のケーフーズ生田目のS社長が出店すると聞いて訪ねた。

昨年の福島東北まつりのとき、こんにゃくやつくねダンゴ、アユの塩焼き、揚げしゅうまいといったB級グルメを炭火焼きで提供し、行列ができていた店だ。
 
亡くなった奥さんの実家がもともとこんにゃく生産加工の店だった。千葉で農機具重機の会社に勤めていたが、塙にUターンして、独立して創業した。だが、こんにゃくだけではいずれ行き詰まる。
 
そう考えて、地域の食材や農産物を利用して、新しい商品開発を考えた。いまでも売り上げの3割以上はこんにゃくらしいが、その商品開発で先細りする商売を支えている。
 
地元の農家や生産者に、震災前からいまのままの農業では行き詰まると提言してきた。だが、農家も生産者も、ある意味、一国一城の主である、自営業者。なかなかこれまでの慣習や常識から自由になれない。その壁にいまもぶつかっているという。
 
Sさんはいう。「オーガニックが求められていることも、集約的な農業をみんなで工夫しなければいけないこともわかってるんですよ。でもね。新しいことを始めようにも、高齢化が進んでいて、体力勝負の農業ではなかなか思うようにはできないんだよ」。

おそらく、創業以来、ずっと塙の高齢化と高齢化ゆえの農業の限界とぶつかり続けてこられたのだろう。
 
練馬つつじ公園は、文化センターの前の小さな広場だ。地域外からは、福島からは塙の道の駅とケーフーズだけが参加。地元自治体がこうした小さなイベントをこまかく拾っているらしい。しかし、小さなイベントながら売り上げにつながっているはずだ。

小さなイベントで出会ったお客が、インターネットでつながってくれることもあるし、インターネットで知ったお客が、まつりに出るとき、顔がみたいとやってきてくれるらしい。まさに、Smart City FUKUSHIMA MOVEをやっている。
 
そのイベントの姿に、実は、反省した。
 
福島東北まつりの半分以下の規模。当然ながら、テキヤも入れていない。ステージもそう大きいものではない。ほんとに地元の小さな祭りだ。
 
だが、そこに、家族連れや子どもから高齢者まで、大勢の人が集まって、楽し気。そして、地元の芸達者の方たちが、うれしげに舞台に上がっている…

心を通じるイベントとはこうでなくてはいけない。その場の利益では大イベントにはかなわないかもしれない。だが、ここにきているのはこの練馬や西武線沿線の生活者の方たち。そこにファンができれば、その人たちは確かな応援団になってくれる。
 
「小さいことをコツコツ積み上げるしないなよ」。そう笑うSさんの顔は、実にいい顔だった。