秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

それがオレたちの仕事というものだ

前から約束していたSミュージックのOが来訪。最初に使った役は派遣雇用の工場労働者。ワンシーンだけで、先輩工員から頭を殴られるだけの役(笑)。
 
出会ってからもう7年になるが、いまは着実に俳優としての居場所を固め始めている。この数年、テレビの連ドラ、映画、CMといい仕事が続いているのだ。
 
その朝早く、同じ事務所のYからもメール。「Oさんが行くとのいうので、自分もいっていいですか?」

ということで、まずは、夕方早い時間からやってきたOに、観たいといっていた福島や石巻の被災映像、いくつかのコメントを聞かせる。なんでも、被災地のろうあ者へ応援メッセージを送るボランティアの活動に参加したらしい。

ところが、簡単にがんばってくださいとも言えず、どうコメントしたらいいのか、悩んでしまった。オレの活動を知って、監督と会って、話を聞けば、自分がどういうコメントができるのか、すべきなのかが見えると思ったのだ。
あまりいい評判を聞かないボランティア団体に登録するというので、汗を流して瓦礫の撤去や泥だしをするものいいが、現地を知るためには、人とふれあい、語り合い、互いをよく知り合うことをやらなくてはいけないぞと諭す。
 
息の長い付き合いをしていく…という覚悟を持った方がいいと思うからだ。
 
順調な仕事ぶりに、以前は天狗になるなと叱ったが、今回は、そろそろ仕事を選べとアドバイスする。もうそういう時期に来ている。被災地のことにしても、単なるボラティアとしてではなく、俳優という立場で、自分にできることを考えればいい。

芸術系大学の帰りに立ち寄ったYは、以前、ここで、つらさや苦しさに泣いたときに比べたら、ずいぶん吹っ切れていた。
 
事務所のマネージャーとしっかり話をしろとアドバイスしたことも実行し、結果、安心がえられたようだった。いまは力をつけるとき、あれこれ心配して、焦るのではなく、また、がんばらくてはと自分を追い詰めるのでもなく、いま自分がやらなくてはいけないことに真摯であればいいのだ。

いずれYもいまのように悩んだり、悔しがったりしながら、いまの仲間内だけの人間関係から脱皮できるようになれば、きっとOのように、ゆっくりでも、しっかり自分の俳優としての居場所をつくっていくことができる。

若いと人はつい、目先の仕事にとびつき、本来目指している仕事ではないことにいら立ち、要領よくやろうとしてつまづいたりする。そして、そこでの思いを目先の楽な人間関係、手近な関係の中で、紛らそうとする。
 
しかし、若くとも、志や夢を持つものは、5年先、10年先の自分の仕事をみながらいまを生きなくてはいけない。そんな自分に伴走してくれ、自分の世界が広がったときでも、その変化に戸惑わず、むしろそれを喜んだり、応援できる人をみつけることの方が大事だ。
 
手軽な癒しや気晴らしに時間や気持ちをとられず、先の自分をみつめて歩めば、先の自分に必要な人、大切な人がだれなのかがわかる。それには、仕事でも、恋愛でも、人間関係でも、手軽なところで自分を安売りしないという志がいる。
 
夢や希望、自分の望むものを手に入れるためには、そうした強さと確かさ、そして、したたかさがなくてはいけない。月並みな幸せだけを求めていては、それはできない。残念ながら、それがオレたちの仕事というものだ。