秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

気のいいおじさん

昨日は、からりと晴天。気温も25度を超える。
 
本当に、この気候は異常だ。この時期に27度を超えるなんて。
 
とはいえ、天気もよく、絵画館の外周を早足で歩く。女性にしたら、軽いジョギング程度のスピード。ひとしきり、歩いて、噴水の前で、ストレッチと筋トレをやり、リックを背にしようとしていたら、初老のおじさんが声をかけてくる。
 
「すごい量の運動をやりますねぇ…」と、パンとみかんをかじりながら、おじさん。「いや、これくらいは、まだ、軽い方だと思いますよ」と汗を拭きながらオレ。
 
それをきっかけに、体調から、健康管理の話と、話がとまらなくなる。
 
なんでも、足立区から自転車で外苑まで来たらしい。年令は73歳。昔、野球をやっていて、プロを目指すほど、練習に明け暮れたらしいが、半月板を損傷して、夢をたたれた。
 
それで膝の筋肉を強くするために、自転車を始めたらしい。
 
神宮は73歳くらいの人にとっては、野球のメッカ。なにやら、東京六大学のにおいがそのおじさんからする。法政あたりではないかと直感が働く。いまでもヤクルト戦には家族でくるらしく、その土地勘も多少あって、終着点は神宮にしているらしい。
 
天気がよければ、都内は自転車で動くオレは、自転車談義にまたまた吸い寄せられ、しばし話し込む。何かの縁だからと、おじさん、みかんをくれた。
 
「足立に帰るなら、春日通りをつかって、湯島天神でもいってきたら」とオレ。自転車はそうした楽しみがあるからやめられないね」とおじさん。
 
こんなふうに老いを楽しめるというのは、この人がこれまできっと、職人として地道に働いてきたからだろう。端々から、どうやら、自営のテーラーの職人さんのような気がした。
 
きれいな目ときれいな表情をした人だな。話を聞きながら、そんなことを思った。
 
そして、なぜかせつなくなった。こうして市井に生き、健康のためと自転車を趣味として、ささやかに人が生きている。だが、こうした高齢の方たちが、10年後、もっと体が弱くなって、オレたちの社会は、この笑顔を守られる社会であるだろうか…。
 
さわやかな出会いに感謝しながら、また、この国のあり方に心が及ぶ。