秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ゲゲゲの同級生たち

NHK朝の連ドラ「ゲゲゲの女房」が高視聴率をとっているらしい。
 
団塊世代からその直近のオレたち世代、現在の45歳程度くらいまでは、水木しげるの作品は、リアルタイムでふれている。
 
自分が小学生、中学生、高校生の頃、話題になったコミックで馴染みが深いのもあるだろう。しかし、それ以上に、昭和30年、40年代初頭までの貧しさから豊さへと向う、あの時代の光景がよみがえってくるからではないかと思う。
 
オレたちの子どもの頃、少年画報、少年マガジン、少年サンデーといった漫画雑誌を定期的に読めるのは、ごく一部の裕福な家庭に限られていた。
 
貧しい警察官の給料の中から、オヤジがオレたち子どもに買ってくれたのは、小学館の小学生シリーズ。それでも、子どものために定期購読の雑誌をとっている家は、当時としてはいい方だった。
 
理由は簡単で、付録に副教材などが付いていて、学校の勉強の補習ができるようになっていたのと、漫画だけなく、読みきりの情操を育てるいい物語が掲載されていた。それに、表現描写が大人しい漫画がほとんどだったからだ。だから、オレは少年サンデーなど小学校の2年生くらいまで知らなかった。
 
小学校の3年生ときだったと思う。通学路にある一戸建ての屋敷のような家に住む同級生がいた。
 
そいつは超勉強ができたのだが、仲良くなって家に遊びにいくようになると普段読めない少年マガジンやサンデーがあふれている! そいつは、すべての雑誌を定期購読していたのだ! 当時の小学生ではあり得ないことだった。当然ながら、オレたち貧しいとこの子は、そいつの家に日参した。
 
姉貴の還暦のお祝いで今年初め、帰省したとき、大濠公園から六本松の方を歩いてみた。その通学路も、そいつが住んでいた家も、まだ残っていた。家屋は残っていたが、建築計画の表示がされて、もう誰も住んではいなかった。
 
ゲゲゲの女房」を見ていると、ふとそんな昔の同級生たちのことや友人のことを思い出す。同時に、いまとは比べものにならないほど、貧しく、不便な生活を生きながら、互いを思いやる心が、人々の生活のあちこちに溢れていた。
 
終わってしまった時代と切り捨てることは簡単だが、あの時代から学ぶことは、いま途轍もなく、多い。