秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

傷つけるのも人 癒すのも人

このところ、なつかしい人たちからの電話やメールが続く。
 
かれこれ2年近く、顔をみてない、涼子からメール。人より免疫力が弱く、若気の至りのやんちゃもあって、たびたび体調を崩していた。「中途半端な健康で無理をするより、きちんと身体を治せ」。その言葉通り、体調が完全によくなるまでと、姿を消していた。たまにもらった電話でそんな決心を語っていたのだ。
 
「やっと元気になれました」。病気がちだった身体をなんとかしよう。その思いは、気持ちの建て直しをしようという思いもあったに違いない。月末過ぎには、会いたいといってくれた、そのメールがうれしい。
 
オレは言葉がきつい、言葉が悪い。だが、どんなに長く連絡のない奴でも、一度、いろいろとプライベートな話も聞き、その悩みや苦しかった思いを聞いた人間のことは、絶対に忘れない。
 
また、遠ざかって、連絡をしなくなった、できなくなった奴のことも、決して見捨てない。いつもどこか、心の隅で、そいつの幸せと健康を本気で祈り続けている。
 
人には意地やプライドがある。見栄や体裁もある。期待に応えたいという思いもあるだろう。もっと元気な姿、うまくいっている姿を見せなくてはと見えないところでがんばる奴もいると思う。
 
だから、そんな空気を感じたときは、こちらからほとんど連絡はしない。オレのふれあい方が間違っていなければ、きっと、何かのときに連絡をくれる。そう信じている。
そして、連絡をくれたら、よかったな、がんばったなといってやれば、それでいい。
 
昨日も半年ぶりに、元女優のKから電話。またまた男と別れていた。予想通り。何度も同じ失敗をやる。だが、それでいい。その中で少しずつでも変ろうとすればいい。
 
Kのキャラクターもあるが、昨夜はとくに、ビシビシ厳しいことをいった。何かを求めているから、相談の電話をしてきた。相手にもよるが、求めているときに、伝えなければ、言葉は伝わらない。
 
オレの仕事の方がいま何かと大変だが、なんとかワークショップを実現したいと改めて思う。
 
おそらく、オレのワークショップに期待しているのは、役者としての技能を上げたいという思いと同時に、厳しいと最初からわかっているワークショップの中で、自分自身の心も磨きたいのだ。
 
劇作家演出家のつかこうへいが亡くなった。つかの演出は、俳優を稽古でとことん追い込む。その苦しさの中から浮き出てくる俳優の本性を演技に結びつける。いろいろな体裁で、表に出していなかった、自分という人間の弱さや歪さ、邪さ、淫靡さ。それと向き合わせることで、その俳優にしかない美しさを引き出す人だった。
 
人は、すぐに素直になれない。そこには心の傷があるからだ。だが、それはいつか乗り越えなくてはいけない。それには、その傷の痛みをひた隠しにするために殻をつくっている自分自身を乗り越えるしかない。
 
つらく、痛いけれど、それをすれば、自分が殻の中にいたときより、それを受け止めてくれる人間がこの世にはいたのだと、気づくときがくる。
 
人を信じる力でしか、自分の傷は癒せない。傷つけるのも人だが…人でしか、人の傷は癒せない。