秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

革命的な行動を

週明け、党人事、組閣を行うという菅新総理の言葉とは裏腹に、週末から官房長官、党幹事長人事が行われ、政策継続のねらいから主要閣僚の留任が決まったらしい…。
 
突然の首相辞任。さらには、郵政改正法案、労働派遣法改正案など、連立政権の要といえる法案審議も残り、九月民主党の党代表選挙が控えている。7月にはサミットもある。その中での党役員人事、組閣となれば、大改革の人事は見送らざるえなかったのはわかる。
 
が、しかし。
 
やはり、菅新総理を始め、民主党は、国民がどういう思いで、昨年九月、政権交代を行い、何を期待しているのかが見えていない。いや、見えているのかもしれないが、政権政党として後ろ指を差されないために、毅然とした政策転換はやむなし、という、かつての自民党がやっていた強行姿勢はかわっていないらしい。
 
官房長官に内定した仙石氏、国家戦略担当大臣に内定した荒井氏など幾人か、面識のある議員が菅総理周辺にいることもあって、その力のほどがおおまかわかっている。仙石氏などは、明らかに鳩山・小沢路線とは一線を画した優秀な政治家。しかし、それでも、政権政党としてのしがらみに縛られるのか…。
 
昨夜、10時からのNHKの報道番組「追跡」に、前沖縄県知事の稲嶺恵一氏、橋本首相時代の内閣補佐官で、外交評論家の岡本行夫氏、民主党の結党時からブレーンとしての役割を果たしてきた、北海道大学教授の山口二郎氏が、鳩山政権の問題点とこれからの政権政党のあるべき姿いついて、実に、魅力的で建設的な議論を展開していた。
 
基本、まず沖縄問題は、もはや民主党が想像する以上に、県外移設は不動の県民の意志になりつつあること。日米政府がもし強行に辺野古周辺住民の反対を押し切るようなことなれば、それは、第二の三里塚闘争(成田空港闘争)になりかねない危機をはらんでいる。
 
まして、先般の全国知事会には、多くの県知事が不参加。沖縄の基地負担の軽減に声を上げたのは、わずか大阪府知事の橋本知事のみ。これは、長く本土からの差別と切り捨てという辛酸を嘗め続けた沖縄県民の心を徹底的に蹂躙した。
 
戦後65年、日本の安全保障問題に米軍は必要といいながら、一度も日本人全体の問題、本土の問題として基地負担を行わず、沖縄だけに基地を押し付けてきた限界が、もはや沸点にきているという認識が民主党連立政権にも、日本国民にもまったくかけている。
 
政治主導によって、米軍基地の徹底的な見直しを行い、米軍基地の県外分散を安全保障の新しい視点から、アメリカ政府、沖縄県を含めて協議できる委員会を設立せよ。山口氏、岡本氏、稲嶺氏の意見は実に正論。
 
人々が新政権誕生に期待したのは、こういうことだ。
 
いままで沖縄だったから、また沖縄でよいのでは…、でなく。かといって、本来普天間基地周辺の住民の安全確保のための政策を日本の安全保障とのからみで論じるのでもなく。日米安保全体の見直しを進めながら、その中で、これまで常識とされてしまっていた沖縄問題を国全体の問題として議論する場と法制度の整備への姿勢を具体的に提示することだったはずだ。
 
菅氏の側近のひとり、玄葉光一郎議員は、政策通といわれているが、あたらな政権のあり方を提言する、山口、岡本、稲嶺氏の言葉を正面から受け止め、全く新しい発想でそれに応えようとしているとは、とても思えなかった。
 
国民が民主党に期待したのは、これまでとは全く違う斬新な国民、市民主体の政策実行なのだ。いわば、革命的な行動だ。言葉ではそれをいいながら、現実の政策実行、とりわけ沖縄での裏切りは、言葉そのものの信頼性を失わせている。
 
民主党が本当に国民の目線、国民の側に立った政治を実行できるのかどうかは、いまや、ひとえに沖縄を含む日米の新しい他者性を構築できるかどうかにかかっている。