首かけイチョウ
結婚30周年の記念にスイス、ドイツ、フランスを旅してきたプロデューサーのKさん。
嘱託になったとはいえ、10日間の長期休暇。部署内ではブーイングも 普段、そんな長期の休みなんて取れないオレたちの世界。だが、プライベートを大事にするKさんは、構わず、わが道を行く。
社内恋愛から結婚。女性にやさしく、ファッショナブルIVYをいまでも通すKさんは、60過ぎてもモテモテ。女優の内田は、ハマのファンでもあるが、実は、Kさんのファンでもある。
女性はやさしい人がスキ。叱咤して、励ます男より、ぎゅっと抱き締めるように包み込んでくれる人がスキらしい。ま、オレとは真逆のタイプだ。
モテモテのKさんだから、夫婦関係は、いつも順風満帆ではなかったろうが、同じ映画の世界を生き、ものづくりの世界を理解してくれる奥さんだったから、ま、いろいろあっても30年という歳月を共に生きられたのだろうと思う。
かつての日本の農協の団体旅行並みに、いまは中国観光旅行客パワーが炸裂しているらしい。確かに。銀座を歩いていても、最近は、中国語があちこちで聞こえてくる。それでも、欧米への旅行者の10分の1程度しか、日本には来ていない。人は、本物に集まる。
樹齢400年程度といわれていて、明治の後期、日比谷公園を立案した人物が、都市整備で伐採されそうになったこのイチョウを辞職覚悟で日比谷公園に移植して、守ったということから、首かけイチョウと呼ばれているらしい。
不思議なことに、逆光でもないのに、撮影したデジカメの写真を事務所に戻ってみてみると、不思議なやわらかい光に包まれている。まるで、紗幕を引いたような幻想的な雰囲気…。これは、やはり、パワースポットと呼ばれる、なにかの証か?
いまこうしたパワースポットといわれる場所や物が注目を集めているらしい。だが、その中で、どれほど、そこに本物があるのだろう。
昨年の自殺者の数は、やはり、3万人を越え、自公時代にやった自殺防止策の政策効果はまだ出ていない。悲しむべきは、30代、20代の自殺の理由のトップが生活苦によるものだということだ。
夢を追い、駆け抜けるべき青春の時代に、生活苦で自殺する世代の人々を量産していくるこの国。そこには、本物がないことが、ひとつの大きな理由ではないかと、ふと思う。
本物の願い、思い、誓い、それらを背景とした、取り組み。壊れそうな心を支える理想の生き方や苦しさの中でも希望を見出せる、本物の姿があれば、人は、そう簡単に人生を投げ出したりはしない。
いろいろな行き違いや思い違いがあっても、たがいをいつくしむ本物の気持ちが、大事なのだ。Kさんの姿にも、それがある。