秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

明日が来たり

昨夜、遅くまで資料を読み漁っていた。
 
珍しく朝起きたら、9時近い。あれこれ、雑務をこなし、一息ついたところで、シャワーを浴びようとしていたら、うちの女性OA担当のNがピンポン。
 
失念していた。11時の約束。部屋着のまま、奴のプレゼンを聞く。どうしたんだ、オレ。こんなことは、この数年一度もなかった。
 
どうも、この数日、おかしい。昨夜というか、いまもだろうが、ハマの誕生会。事前に奴には、参加できない侘びを入れておいた。仕事も詰まってきているのもあるが、この数週間、人ごみがイヤだ。ジョークや戯言が飛び交う席にいたくない、と思ってしまう。
 
アフガンの厳しい現実の資料を読んでいるせいもある。その中に半分ほどで読み終える資料がある。翻訳本だが、実に言葉のセンスがいい。取材をもとに本にしているだが、まとめた取材者の言葉を読み取るセンスに脱帽。
 
英文科にいたせいもある。ロシア語を少しできるせいもある。書かれている日本語の向こうに、いかにもスラブ系の教育を受けただろう、会話のセンスを読み取り、かつ、そこに綴られたアフガニスタンの女性の知的センスの高さを知る
 
しかし、一番、それを感じさせているのは、背後にあるイスラーム(宗教)の力だ。翻訳本でありながら、他者を思いやる言語に込められた、美しさが漂っている。
 
10時半まで資料を調べていると、突然、ハンナのばばあの顔が見たくなる。ということで、最近、お気に入りの刑事コロンボのようなコートを着て、ばばあの顔を見にいく。
 
閉店時間まで、まだ20分ほどあるのに、ばばあめ、片付けを始め、店のドアの鍵をしめてやがる。無理クリ、開けさせて、あれこれ語りながら飲む。例によって、かみ合わない会話。
 
だが、オレの仕事には、どうしてだろう、いつも異常な関心を持つ。結局、いま企画している映画の話から、政治の話、色恋の話と話題が飛び交い、この時間まで、高齢者をひっぱる。ばばあのいいところは、話題が興にのれば、オレが帰るというまで、付き合うところ。
 
また、いつものように、店を出るとき、皿うんどんだの、せんべいなど、くれる。いつも、その度に思う。お前、おふくろか!
 
作家モードになると厭世的になる悪い癖。このところ、完全にひきこもりモード。ハンナの店を出ると、ふと、シェークスピアの名台詞が浮ぶ。Tomorrow and Tomorrow
で始まる、あの一節。
 
明日が来たり、明日が去り
また来たり、また去って
時はトボトボと、小刻みに
記憶に残る最後の一瞬まで消し去ってしまう。
消えろ! 消えろ! つかの間の灯火!
人生は、うつろな影法師だ!
憐れな役者だ!
だた一時、舞台の上でぎくしゃくやったかと思うと
わけもなく、喚き散らす。
さっぱりわけはわからない…。
坪内逍遥訳)
 
シェークスピアは、逍遥訳が絶品。これを暗記している、オレも凄い。