秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

夢と幻想

ご無沙汰している、デザイナーのRからBCCのメール。

民主党の予算編成に伴う仕分け作業の中で、漢方薬が保険対象外にされるという仕分けがされ、日本東洋医学会や漢方製剤をつくっている医薬品メーカー、患者からの猛反発を受けている。その反対署名をしようという呼びかけ。

最近、話をしていなから、どういう経緯で奴が漢方薬保険適用外の仕切りに反対の呼びかけを率先してやっているのかわからない。が、趣旨は妥当なもの。

いまや漢方薬は、病院で普通に出されるし、一部、がん治療など抗がん剤治療の副作用を嫌う患者や医師から歓迎されている。中西結合医学というもので、中国医療と西洋医療とを互いに補完しながら、治療を受ける患者のQOLを高めようという動きは、すでに一般化しているのだ。

これまで、外科的処置を軸とする西洋医学一辺倒で、漢方は、医療界からはじき出されていた。しかし、インフォームドコンセントQOLという患者の立場に立った医療の実現という視点から、1980年頃急速に注目を集めるようになった。

いまでは、緩和医療ペインコントロールという点でも漢方は、大きな役割を果たそうとしている。

しかしながら、合併吸収される前、不正経理で問題になったツムラや経営破たんしたカネボウのように、漢方薬の市場は寡占化がひどく、旧態然とした経営体質や市場で、いろいろと物議をかもしてきたのも事実だ。また、現在保険適用とはいえ、価格が高い。

高額な漢方を医療現場で使うという背後には、漢方医薬品製造メーカーや流通の中で、村社会的癒着の構造があるからだと疑われるたことも、しばしば。

おそらく、仕分け人側には、そうした情報なり、漢方薬を取り囲む閉鎖的な市場のシステムのあり方に疑念があったのだろう。

オレが中西結合医学や中国医学、漢方に詳しいのは、ずいぶん前に、蓼科の地域活性化事業のコンサルタントをやっていて、国内初の北京医科大学と地域事業体との合弁事業を手掛けたからだ。自社の作品として、中国オールロケで中国医療の治療全集も発刊している。

Rと知り合ったのは、ちょうどその頃で、外苑前にあった、チュチュ倶楽部という店。オレの友人の在日の美術家がすぐ近くで、わっしょいという店をやっていて、その一番下の弟がやっていた無国籍料理の店だ。

経営難で閉店するまで、約25年間、通い続けていた常連のひとり。閉店の4年ほど前に常連になったオレは、新参者だったが、オーナーと古い知り合いということで、大事にしてもらった。当時、オレと仲の良かった常連たちとは、もう顔を合わせることもない。

Rは、デザイナーということで、窮乏している奴を救おうと、事務所も近いことから、小さい仕事をいくつか頼んでいた。オレのHPの表紙と枠組みをつくってもらうなど、まだ顔を合わせている方だったが、奴が経費削減で青山にいなくなってからは、顔を合わせていない。

派遣の仕事をいくつも掛け持ちし、すでにデザイナーとはいえない苦しい状態にある奴が、自分にできる社会への呼びかけをやっているのに、驚くと同時に、よかったと思う。

苦しいときだからこそ、何か人のために役立つことをしろよ。そんな説教を会う度にしていたからだ。

仕事でうまくいかないときは、得てしていろいろなことが、起きる。病気になってみたり、不意の事故や怪我をしたり、どうして自分だけがこんな目に遭うのだろうということばかりに遭遇する。まして、金銭的な困窮があれば、それに追い討ちをかけられる。

しかし、それは、自分を振りかえろ。自分の正しいと思ってきたこと、いままで気づけなかった自分の過ちや愚かさに眼をむけよ、といわれているのだ。

苦しい最中には、その遠い声に素直に頷くことができない。周囲や自分の不運をのろい、自分自身の姿を冷静に見つめることができない。その状態であるうちは、苦難を切り開く手掛かりも見えてこないし、我執に囚われて、人のことを心配するゆとりもない。

それが、また、さらなる窮地に追い込む。

昨日、遅い時間に夜メシをした、これもやはり、チュウチュウ倶楽部の常連だった、Norikoにもいったこと。

「不運を招いているのは、自分」。自分の欲や打算に、自分が縛られている間は、目の前にある救いの手にも、新しい生き方の道しるべにも気づけない。

夢は大事だが、幻想と夢とは違う。それに早く気づけなければ、幻を追い続け、人に翻弄され、幸せとも出会えない。