秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

アメリカ主義の凋落

アメリカの大手自動車会社GMが破産申請をした。

これで、GM、フォード、クライスラー三大メーカーすべてが、政府からの金融支援、もしくは破産申請によって、事実上、国営企業化する。破産は、債権者の半数が、政府が提案した債権払い戻し金額に合意した結果の予定破産だから、会社の再起存続を目指した前向きなものなのだが、これまでアメリカの経済の富の象徴とされてきた大手自動車メーカーの破綻は、大きな時代の転換を世界中に示している。

おバカな国、日本は、今回通過した大型補正予算に見られるように、各省庁の権益や天下りを促進するような、官僚と省庁のためのバラマキ予算を組み、選挙のための自公独裁政権の支持基盤強化予算ともいっていい税金、国債の使い方をしている。各省庁の予算を削り、無駄を削ぎ落とし、その金で国民生活のための減税や福祉、年金といった社会保障、生活環境の保護活動を充実させるという発想がまったくない。

この経済危機の中で、自治体は疲弊しているというのい、国土交通省は、自治体への公共事業負担金をこれまで通り、内訳明細もわからないまま、いいなりに支払えと要求する。しかし、自治体負担の金は、実は、巧妙に、国土交通省の関連施設の建設費や官僚の退職金に回されているという事実がわかってきた。公明党国土交通省大臣ポストにこだわってきたわけも見えてくる。

何一つ、この国の政府、官僚は、アメリカの破綻から学ぼうとしていない。

アメリカの経済破綻で、世界経済、世界戦略の構図が大きく書き換えられようとしているのに、北朝鮮の問題では、自衛隊集団的自衛権の拡大解釈で、北朝鮮本土のミサイル基地を直接攻撃する試案が与党の中で、まとめ上げられようとしている。

大きな間違いは二つ。アメリカの覇権主義は、もう終わろうとしているのに、アメリカの覇権の下でしか、経済の発展ができないとアメリカンスタンダードの幻影に、まだ、この国の与党政治家がしがみつこうとしていること。もう一つは、軍事によって国際紛争を解決するという、アフガン、イラクに象徴される破綻したアメリカの軍事主義の現実をまったく理解していないこと。

アメリカの自動車を例にみてみれば、すぐにわかることだ。環境を無視した、リッター当たり4キロも走らないような大型、中型車をつくり続けて、資源の枯渇への認識もなく、消費者意識とまったく解離した車を作り続けてきた。日本車が登場したときの人々の関心は、低燃費と耐久性。しかし、オイルマネーとの抱き合わせになっている政府も、自動車産業も、それに本気で取り組んでは来なかった。

格差を当たり前とする競争社会で、労働者のレイオフが当然な社会では、役員報酬と末端労働者の賃金格差は天文学的数字だ。自分たちの富さえ確保されれば、地球環境がどうなろうと、末端労働者が生活に困窮しようと知ったことか。その考え方、企業のあり方、そのものが全否定されているのだ。

アメリカのすごさは、この状況に目覚めてから、電気自動車開発にやっきになっていることだ。日本企業の方がはるかに、そのノウハウはあるが、それは企業努力の中であって、国政が徹底して、その開発の音頭をとるということをやってきていない。しかし、オバマ政権以後、あたらな世界戦略として、無公害車の開発に政府が先頭を切り始めている。それが、新しい開発産業やそれによる雇用を生み出すことがわかっているからだ。いわゆる、新ニューディール政策とは、かつての日本が、社会民主主義的であると批難された、国政による企業管理、国政による経済管理を徹底させていくということ。おバカ国のバラマキとは、まったく逆の方向へ、アメリカは舵を切ろうとしている。

つまり、新自由主義と決別しようとしているのだ。

パラダイムシフトを変えるということは、簡単なことではない。しかし、負から多くを学ぶ知恵があれば、負の要因となっていたものを糾し、プラスへと転換することはできる。そのためには、これまでのパラダイムのおかしさに人々が目覚める必要がある。サプライムローン問題で、破綻した人々が銀行の前で権利主張をしたように、気づきと行動が必要なのだ。

おバカなこの国は、小泉郵政選挙以後、国民の真意を一度も問うことなく、自公独裁政権のご都合主義で首相の首をすげかえ、パラダイムの変更を疎外し続けている。だから、まだ、新自由主義アメリカの覇権主義の幻影にしがみつこうとしている。その方が自分たちの権益が守られるからだ。

アメリカは、その覇権主義の凋落という新しい学習基盤を与え、自らもあたらな世界戦略に乗り出そうとしている。それほど、アメリカ主義でいきたいなら、いまこそ、アメリカから学ぶべきときだろう。

己の負、過ち、愚かさに気づけない人間には、他者を幸せにることも、自分自身を救うこともできない。