秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

マッサージで、ふ~

30代の後半までは 定期的にマッサージにかかるなんて 考えてもいなかった

そうした時間のゆとりも持てなかったし 金銭的なゆとりもなかった あったかもしれないが 思い付か

なかった 

当時のオレの睡眠時間は まさに霞ヶ関の官僚並 平均3時間くらいだった 

午後9時過ぎまで仕事をしてそこから飲む 

接待の場合もあれば 仕事の打ち合わせや付き合い あるいは部下の慰安といった具合

家に最終の各駅電車で帰りつくと もう午前2時 そこから寝て 午前5時に起き シャワーを浴び

妻と子どもの寝顔をみただけで 6時には家をでる 8時には会社につき その日のスケジュールを確認し

管理職会議をこなし 午前9時には全開で仕事といった日々…

たまの休みには せめてもと趣味の乗馬 そして 仕事のためのゴルフ練習

女遊びなどする暇さえない 仕事と酒の日々 バラはなかった

要するに 結論からいえば 心にゆとりや遊びがなかったのだ

30代終わりくらいまで それくらい 必死に生きていたと思う そして 40代に差し掛かる頃には酒だけ

でなく 女でいろいろなことをごまかして 心身ともにボロボロなのに まだ 体力があるからそれと気

づかないで 疾風怒涛の生活を送っていた

30代まで貧しい劇団をやり 解散後 数年で企業の役員になり しかし 独立し ひとりで売上げ1億を

目指す なんてバカなことやっていたら そうなる

定期的に体の手当てをするようになったのは 40丁度くらいのときだった 当時付き合っていた女が

オレのおふくろくらい すごい凝り症で 当時 オレがよく飲んでいた店で知り合ったスポーツマッサ

ージのオーナーのやってる店へ通うようになった

それまで肩凝りなんて自覚はなかった 背中や腰 足など下半身の疲れは感じていたが 肩はまったく

自覚がない が そこのマッサージ師たちは異口同音に ひどい肩凝りだという

「よくあるんですよ 凝りのひどい人ほど気づかない しかし 病気の原因になりますから きちんと

手当てした方がいいですよ」と脅す

以来 定期的に通い出したが そこはスポーツマッサージの店 オリンピック選手や野球・柔道などの

プロアスリートも使っている店 芸能人やミュージシャンも多かった

徹底的にやる あまりに全身の凝りが激しいオレは3人かかりでほぐされる 4Pだ!

柔道をやっていた豆タンクのような女性がオレの担当だったが カーテンの中で オレが「ひー」とか

「はー」とか 「うっ!」とか叫ぶから オレと彼女のマッサージタイムはセックスタイムと揶揄され

名物になっていた

ただ そこは場所が遠い 恵比寿なので遠くはないが マッサージの後 ふにゃふにゃになった体で乃木

坂まで帰るのは ちとつらい マッサージの後は あのふにゃとした時間が心地いいのだ 途中どんなに

痛くても あの快感を知ると あのふにゃは逃しがたい

マッサージとセックスはどこか似ている α波が大量に出ることも同じ 終わったあとの心地よい虚脱感

も同じ

セックスが人の癒しになるのはそのためなのだ これ脳生理学の常識

そこで ある日 マンションのポストに入っている赤坂の吉田マッサージ院を頼んでみた

出張マッサージだ 初めて頼んだとき たぶん 勘違いして笋靴討るオヤジがいるのだろう

「うちは男性だけですけど いいですか?」と何度も訊かれた 場所柄致し方ない

以来10年以上世話になっている

大きなイベントで寝不足が続いたとき 台本書きで根気が続かないとき また 台本を書き終えたとき

撮影が終わったとき 原稿の企画で発狂しているとき 飲み会が続いたとき などなど ウオーキング

2時間汗を流すが 東京体育館のプールで泳ぐか その店のなじみのマッサージの先生に来てもらう 

冬場はほとんどマッサージだけ 仕事柄風邪がひけない 

なじみの先生たちとは もう何年もの付き合いだから オレの体の状態がよくわかっている

ちょっとさわっただけで 問題点を発見し 適切なマッサージをやってくれる ほんとにありがたい

ほぐされながら 時事問題から最近の景気 赤坂・乃木坂・六本木界隈の夜の状況などあれこれ話をしな

がら 貴重な情報を得ることも少なくない 気持ちよくて 途中30分以上は寝込んでしまうのだが

当たり前だが マッサージをやると気分まですっきりする

それまで あれこれ悩んでいたことや気に掛かっていたことが 一旦 棚上げにされ 脳に隙間ができる

とオレは感じている

あるとき 先生にいった

「オレ 心をほぐすために マッサージしてるんですよ」

先生は「ほぉ~」と彼らの心意気を感じてくれたことがうれしそう 体がほぐれれば 心もほぐれる

だから 気持ちを切り替えるのにマッサージはいい スポーツもそうだ

昨日 このところ50肩が少しいい具合になり 耳のなんとかという病気も診断で回復しているといわれ 

いい調子だ がんばって台本書きしようとした朝 また 肩が痛く 耳が詰まったような感じ

メタボの騎士は やはり 疲れているのだ そういいわけをして マッサージを呼ぶ

痛きもちいいところもあるが 鬼のように指を入れてほぐしてくるところもある 激痛!

そうだ セックスのテクニシャンもきっとそうに違いない だって オレだって…

なんてバカなことを考えながら いつもの快感に浸る 

おかげで 今朝は調子いい

人生生き急ぎする時期があってもいい それは貴重な財産になる 40くらいまではそれでいいように

思う しかし 孔子不惑といったように 40過ぎたら 心の隙間をつくることを考えるべきだ

懸命な仕事といい仕事は違う

懸命な仕事は たしかに切実で 美しい

しかし それが必ずしもいい仕事になるかどうかはわからない

齢を重ね時間が少なくなれば いい仕事だけがしたい いろいろな意味で

そのためには 朝早起きして散歩することも 軽く運動することも マッサージで心をほぐすことも

必要 それは無駄な時間ではない 焦りを取る時間だ オレはこの数年 そう思っている

日本に数台しかない特別仕様のBMWをかっとばして 打ち合わせから打ち合わせへ 長野の蓼科から

六本木のスタジオへわすか2時間半で 深夜高速をぶっとばしていたオレからは想像できないセリフだが

心をほぐすことは 人が生きる上で大事なこと

恋も心をほぐされない恋は 意味がない 恋をするということ 愛し合うということはそういうことだ

いまの人は 多くの人が仕事でも 恋でも 大きな勘違いをしている 家族でも親子関係でもそうだ

ほっとする 心に隙間をつくる時間を オレたちみんなが持てる社会 世界がくれば もっと世の中

よくなるような気がする そして 切実で美しいだけでなく 自分にとっても 他者にとっても よりい

い世界が生まれるような気がするのだが…