舞台照明デザイナーに会う
四年ぶりだった
いまや押しも押されぬ 日本を代表する舞台照明家Yと久しぶりに再会
高校の演劇部の後輩で 奴はその後地元の大学演劇部で役者をやり 大学を中退して 市民ホールの小屋
付き照明になった
しばらくすると連絡があり 話があるという
地元に帰ったついでに会うと東京の某大手舞台照明会社に転職したいという相談
相談だと思っていたら その一週間後 いきなり阿佐ヶ谷の四畳半のアパートにころがりこんできた
丁度オレが劇団を主宰していた頃で ノーギャラで照明プランをつくってもらい
劇団活動中 オレをフォローしてくれた うちの劇団は照明・装置・衣裳すべてが一流スタッフだった
セミプロ劇団だったが 学生演劇のレベルでは オレの演出にはついて来れない そういう劇団だった
手前味噌だが 低迷していた高校の演劇部を地元で一目置かれる存在にまでしたのはオレなのだが
先輩のオレのやりたいことを 当時から現役で支えてくれた奴だ
オレが舞台で何に怒り 役者に何を求め どういう芝居をつくろうとしているのか
それが阿吽の呼吸でわかる
高校演劇のレベルが高かったから オレも奴もプロの世界でとまどうことはなかった
たぶん 先輩連中の中で 舞台に一番 厳しかったのはオレだった思う
奴はそれをよくわかっている がいいなりでなく きちっと意見も反論もする
そこがいい
なにせ 奴が15歳のときからの付き合いだから もう40年近い
悔しい思いをしながら 必死で劇団をやっていた頃
ゲネで駄目だしをしながら ステージ前に陣取って演出をつけていると
ふっと出前のコーヒーが運ばれてくる
スタッフにだれだ? と聞くと 奴だ
そういう気遣いをする男だった
初日の夜には 必ず酒を酌み交わす
舞台演出の仕事は初日の幕が上がれば それで終わったようなもの
オレだけの打ち上げに奴はいつも付き合い
「幕が開いて よかったですねぇ」としみじみ言う
また それがうれしかった
何度か奴に頼んでホテルのブライダルフェアや3000人規模、10000人規模のイベントをやった
そのときも イベントが撥ねると 二人で遅いめしを並んで食う
黙ってさめた弁当を食う 言葉にしなくても やったなとお互いが語り合っている
オレが映画の世界にどっぷりつかるようになって ステージ系の仕事がなくなったから
奴と会うこともなくなったが できれば今年 奴も手伝った20年近く前の芝居を再演しようとしている
その出だしに奴の意見が聞きたくて連絡した
「また カメレオンのように変身していますね」と笑いながら コレドで酒を飲む
奴は また家庭の悩みを抱えている
10年近く前も奴の家庭の悩みを聞かされ
また そういう節目に不思議と出会う
「おまえには きっとミッションがあるのさ」
そうなのだ 家庭という日常を育てられない そういう男はいい加減なのかもしれないが
それでも 果たそう 果たしたい 仕事がある
それは 自分のためでもあるが 人のためにでもある
孤独に耐える強さがなければ できないこともある
それに 人生の方程式はいろいろあっていい
奴が家庭のことで悩むのは 奴が懸命に生きているからだし もっと自分を高めたいとどこかで願って
いるからだ
オレと違い 家庭好きの男には ちょいつらいだろうが
Yよ また オレと世のため 人のため 死んでしまっただれかのために
奴らの人生の思い残し切符を 舞台で 観客に渡そうじゃないか
いまや押しも押されぬ 日本を代表する舞台照明家Yと久しぶりに再会
高校の演劇部の後輩で 奴はその後地元の大学演劇部で役者をやり 大学を中退して 市民ホールの小屋
付き照明になった
しばらくすると連絡があり 話があるという
地元に帰ったついでに会うと東京の某大手舞台照明会社に転職したいという相談
相談だと思っていたら その一週間後 いきなり阿佐ヶ谷の四畳半のアパートにころがりこんできた
丁度オレが劇団を主宰していた頃で ノーギャラで照明プランをつくってもらい
劇団活動中 オレをフォローしてくれた うちの劇団は照明・装置・衣裳すべてが一流スタッフだった
セミプロ劇団だったが 学生演劇のレベルでは オレの演出にはついて来れない そういう劇団だった
手前味噌だが 低迷していた高校の演劇部を地元で一目置かれる存在にまでしたのはオレなのだが
先輩のオレのやりたいことを 当時から現役で支えてくれた奴だ
オレが舞台で何に怒り 役者に何を求め どういう芝居をつくろうとしているのか
それが阿吽の呼吸でわかる
高校演劇のレベルが高かったから オレも奴もプロの世界でとまどうことはなかった
たぶん 先輩連中の中で 舞台に一番 厳しかったのはオレだった思う
奴はそれをよくわかっている がいいなりでなく きちっと意見も反論もする
そこがいい
なにせ 奴が15歳のときからの付き合いだから もう40年近い
悔しい思いをしながら 必死で劇団をやっていた頃
ゲネで駄目だしをしながら ステージ前に陣取って演出をつけていると
ふっと出前のコーヒーが運ばれてくる
スタッフにだれだ? と聞くと 奴だ
そういう気遣いをする男だった
初日の夜には 必ず酒を酌み交わす
舞台演出の仕事は初日の幕が上がれば それで終わったようなもの
オレだけの打ち上げに奴はいつも付き合い
「幕が開いて よかったですねぇ」としみじみ言う
また それがうれしかった
何度か奴に頼んでホテルのブライダルフェアや3000人規模、10000人規模のイベントをやった
そのときも イベントが撥ねると 二人で遅いめしを並んで食う
黙ってさめた弁当を食う 言葉にしなくても やったなとお互いが語り合っている
オレが映画の世界にどっぷりつかるようになって ステージ系の仕事がなくなったから
奴と会うこともなくなったが できれば今年 奴も手伝った20年近く前の芝居を再演しようとしている
その出だしに奴の意見が聞きたくて連絡した
「また カメレオンのように変身していますね」と笑いながら コレドで酒を飲む
奴は また家庭の悩みを抱えている
10年近く前も奴の家庭の悩みを聞かされ
また そういう節目に不思議と出会う
「おまえには きっとミッションがあるのさ」
そうなのだ 家庭という日常を育てられない そういう男はいい加減なのかもしれないが
それでも 果たそう 果たしたい 仕事がある
それは 自分のためでもあるが 人のためにでもある
孤独に耐える強さがなければ できないこともある
それに 人生の方程式はいろいろあっていい
奴が家庭のことで悩むのは 奴が懸命に生きているからだし もっと自分を高めたいとどこかで願って
いるからだ
オレと違い 家庭好きの男には ちょいつらいだろうが
Yよ また オレと世のため 人のため 死んでしまっただれかのために
奴らの人生の思い残し切符を 舞台で 観客に渡そうじゃないか