秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

飛ぶ夢をしばらく見ない

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東映自主作品のプレビューが終わり 直しの編集も終えた10日夜

今週はRedに顔を出すことがきないからといつものように

ふらりと立ち寄ると、常連のイガがRedでたまに無料ライブをやるギターマンと飲んでいる

女性常連のEやIもいる

そこに割り込んで呑んでいると この間、恋愛説教をやったYがやったきた ときおり、イガを中心にRed

のバンド好き仲間がセッションの練習に集まっているらしい

そうこうしてうちに これも常連のハマが登場

イガ、ハマ、オレが三人そろい踏みするのは 久しぶりで お互い顔は出しているのだが 全員が揃うの

は珍しい そう長い付き合いでもないのに イガとハマがそろうと 三人とも妙に落ち着く

どこか気心の知れた仲間という気分になれる

仕事はもちろんのこと キャラクターや趣味、主張は微妙に違うところもあるだが その違いを楽しめ

違いの中にある共通点を見つけ出すのが お互いにうまい

当然 話は盛り上がるし 周囲の客も巻き込んでしまう

久しぶりに三人で揃うと 改めて こいつらがいるから店にくるようになったんだなと思う

もちろん オーナーのYouがオレたちを引き合わせ 盛り上げてくれたからだが

おそらく Youもこうしたオレたちのような ヘンなおやじ常連を待っていたのだ

そうこうしていたら 銀座のスクールでフラワーアレンジメントの講師をしているMが遅い時間に登場

年齢の割りに落ち着いているから いつも年齢詐称といじっているが Mも いるとなぜか落ち着く

くどいてもいい女だが なぜかくどくより 一緒に飲みたいと思う女だ

さて 今夜は落ち着いた常連同士盛り上がろうかなと思っていたら

某テレビ局で営業をやっている 偶然 W大学の後輩のKが最近女にふられたと愚痴をこぼす

しょうがないと恋愛のイロハを教授し 「好きなら ボロボロになるまであきらめるな」と説教をたれて

いたら これも男女のことであれこれ悩み続けている常連のTがしなだれて 甘えてくる

またもや しょうがないと大人の付き合いや大人の男の身の処し方を手ほどきする

あいかわらず 喧嘩したままの大手スポーツメーカーのYにも小言をいいながら 結局 若い男たち三人

にあれこれ語っているうちに 酒の量は進み 果ては 仕事のことで悩んでいるという愚痴をきくや

「サラリーマンとはな!」と闘うサラリーマンこそ 真のサラリーマンなのだと持論をぶち上げていた

若い奴ら シーンと話を聞いていたが さぞや迷惑だったろうと思う

奴らも必死に働いているのだ

実は オレは劇団を解散して 東宝の戯曲科にいた頃から二足の草鞋でサラリーマンをやっていた

制作会社になろうとしているばかりの本来営業の会社で そこで制作会社の体裁をとるまで 闘い続けた

経験がある そのせいで わずか3年半で役員にまでなって 役員生活がいやでやめた

しかし そのときの仕事は いまでも財産になっている

その本道は いいなりサラリーマンになってはいけないということだ

多少なりとも面識のある若い奴には ただ愚痴をこぼすだけの 新橋のサラリーマンにはなってほしくな

い いいおやじ いい中年になってほしい

その期待を込めて 一席ぶってしまった オレのようなふざけた奴の話は とうにわかっていることだろ

うに しかし なぜか語りたくなってしまった

要はコミュニケーションの問題だし 組織で生きるのは組織のためでなく 人のためなのだ

同僚や部下のためであり お客様のためだ それを忘れてほしくない

恋愛相談といい 仕事のことといい

やっぱり 冗談で話していた 恋愛本やコミュニケーションスキルのための教則本を出すべきなのではな

いか 今度 体育会系編集ウーマンに相談しよう

で 翌日は半分死んでいたが 約束のボランティアがあって 遅刻して参加

酒の抜けた今日は 休みのなかったオレの久しぶりの休日にしようと 『ベンジャミン・バトン』を観に

いった

山田太一の『飛ぶ夢をしばらく見ない』という小説の構成にやや似ている作品

あの小説を読んだ頃 オレは表現者としての自分を失いかけていて せつない恋に落ちていく中年男と自

分をどこかでたぶられせていた

子どもの頃 オレはよく飛ぶ夢を見た

手を羽ばたかせると 空を飛べた コツのようなものがあって あるコツを忘れると急降下しそうになる

その危うい感覚の中 空を飛んだ

サラリーマン生活も いとしい人との付き合いも みんなコツがある しかし 人はそのコツをふと忘れ



人はみな 危うい感覚の中で いまを生きているのだ

いつ崩壊してもおかしくない いまという日常

その中で 危うい感覚をなしくたら 人は人でなくなる 人は人にやさしくなれなくなる

そして 自分の未来をも 見失う