秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

秋葉原無差別殺傷事件を受け緊急発巻!「傷つけられる思春期」

1997年5月神戸連続児童殺傷事件、俗に酒鬼薔薇事件が発生したとき、多くの大人、マスコミが14歳の少

年の犯行という事実に驚愕した。しかし、それは特異な犯罪として、当時、思春期の子どもたちに蔓延し

ていた憤懣や苛立ちを予見することができなかった。

その結果、あの事件以後、未成年や成人男子による児童殺傷事件、誘拐監禁事件、家族内殺人事件が絶えることがない。

酒鬼薔薇事件を日常にはあり得ない、特質した事件として、大人社会から隔離した結果、犯罪を生む背景

にある問題を放置し、思春期問題に無知なまま、犯罪の温床を温存し続けているのだ。

昨年の会津若松母親殺害事件では、遺体損壊の方法とそれを神に捧げると語った少年の行動が酒鬼薔薇事件と類似していることが指摘された。

今回のアキバ事件においては、その小中学校の家庭環境が酒鬼薔薇と酷似していたことが次第にわかり始めている。

こうした事件で、犯人の成育歴や環境が明らかになる度に、ほんの少しでも親や周囲の大人たちの思春期の子どもへの対応が違っていれば、抑止できた事件だったろうにという思いに駆られる。

私たちの社会はそれほどに、思春期問題をないがしろにしてきたのだ。

今回、緊急発巻という形で、『傷つけられる思春期―子どもとの対話を取り戻すために』を制作する。

いま、最も必要な大人、そして私たち社会へ、同じ事件を繰り返さないために、秋葉原連続殺傷事件が残したメッセージを伝えるためだ。

格差が定着し、思春期に受けた傷、コンプレックスや挫折感を増殖する環境が私たちの社会にはあまりに
整い過ぎている。

「ああなりたかった」という思いは、「ああなれている奴は許せない」という感情に簡単に辿り着く。

短絡的と言うのは簡単だ。

しかし、思春期に自尊感情をめちゃめちゃにされ、その傷を引き摺り続けている人間には、短絡的でも何でももない。

人に憎悪のスイッチをつくらせない。持たせない。もし、持ってしまったとしても、そのスイッチを入れさせない。

そのために、私たちには何が求められているのか。

家庭で、地域社会で、学校で、そして、政治の場で、それを真剣に考えるときに来ている。

脆弱で、希望なきテロリスト、自分の行為がテロであるという自覚もないまま、テロを実行する人間を増殖させないために、私たちは、自分さえよければいいという安全な枠組みから踏み出さなければいけない時代を迎えているのだ。