秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

ぼくらくらいなもの

数人の高校生たちが始めた環境保護を訴える運動。それがいま欧米を中心に世界の高校生に広がっている。

ハリウッド女優や政治家のインターン女性が、勇気を出して声を上げたセクハラ被害。いまはme too 運動として世界的な言葉になった。

格差への反発はパリを中心に大規模デモを生み、政権が慌てて低所得者救済政策を打ち出したが、デモの勢いは止まらなかった。

「小事にとらわれず、大局を見ろ」「木を見て、森を見ず」。

つまりは、物事や事象を小さな視点、狭い視野でなく、俯瞰から捉えろということだけれど…果たして、この言葉、いまぼくらが生きている世界にふさわしい譬えといえるのだろうか。

食料品や日常雑貨品が値上げになり、年金支給額や生活保護費が削られる。社会のセーフティネットである高齢者保護や福祉予算が軒並み削られている上に、実質賃金は減少が続いている。

それでも、株価が20,000円代を維持しているだけで、日銀短観も政府の景気動向発表も決して悪いとは発表されない。根拠となる指数のデータの改ざんや破棄があってもだ。

先進国で唯一、子どもの貧困が7人にひとり。単身女性の平均年収が114万円。シングルマザーに至っては、その貧困率は世界1位。

東日本大震災からの復興は、お涙頂戴式の話題は盛んに取り上げられても、いまどうなのかを課題や問題点を的確に、丁寧に伝えるマスコミはじつに少ない。

そうしたことは、小事とされ、大局で復興は進んでいる、経済は安定しているとほぼすべての大手マスコミが報じる。大局でオリパラを盛んに煽りながら、小事で、どうあるべきかの議論を提案する報道はない。

多様性と流動性の時代といわれるようになってから、グローバリズムに軋みが出ているにもかかわらず、実態生活からかい離して、国際社会の動向だからと一律に小事を否定した結果、イギリスのEU離脱を生み、アメリカのトランプというおおよそ大統領にふさわしくないヤンキーを権力の頂点に置いてしまったのだ。

こうした視点を持つためには、当然ながら大局を、森を見なくてはできない。

だが、それを見るために必要なのは、小事をしっかり理解することからだ。漫然と全体を見ても、いまという時代、大局も、森も、その実態を捉えることはできないようになっている。どれが大局なのか、どういう森なのかがわからない。

まずは、自分の眼が届いていない、小事の現実に目を凝らすこと。グローバリズム資本主義を変えられるのは、そんな力だ。

そして、それは、いまもう始まっている。おそらく、まだ腰をあげなてないのは、この国のぼくらくらいなものだ。