秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

スターリン主義と無意味性の連携

反共…。いまや死語、古典といっていいだろう。

 

 

先進国の多くで、社会に異議を唱える人々を一括りに、「アカ」と呼び、それを排除のスティグマとしてきた。



当然ながら、そこには、資本家とその一部だけが得をする資本主義社会の弊害や問題点、矛盾に対して、あらたな経済理論、社会システム論として登場してきた、マルクスエンゲルスの階級社会打倒による共産主義実現を封じ込めようという意図があった。



だが、多くの人々は勘違いしている。

 

 

なぜなら、「アカ」というポスト資本主義の理論を実際には知ることもなく、無知ゆえに「アカ」に対する不安を増大させ、かつ、「アカ」のように、資本主義に抵抗しても権力には逆らえないし、逆にひどい目に遭い、社会から排除されるという恐怖心を権力がつくりあげ、現実に権力がそれを行い、大衆に「アカ」の恐ろしさと加担したときの恐怖を示して来たからだ。戦前戦中の特高警察や憲兵隊を見てもそれはわかる。イギリスにおける女性参政権運動の壮絶な歴史やアメリ公民権運動を見てもわかる。

 



ロシア革命以後、レーニンスターリンによって建設されたソビエト連邦の姿があたかも共産主義国家の実例の如く、世界に頒布され、表現・言論の自由の弾圧、思想統制職業選択の自由の排除、国家による経済計画の達成・不達成による懲罰と成果主義、政府批判への暴力的弾圧や処刑…それだけでなく、特権階級への賄賂の恒常化といった姿が共産主義社会だと思い込まされてきた。

 

 

スターリン主義スターリン官僚主義といわれるものは、いわば、共産主義に名を借りた、革命軍事政権の上層部、革命特権階級による独裁に過ぎない。そのため、これに反対する反スターリン主義者、トロッツキーなど多くの知識人・文化人は粛清(処刑・強制労働)されている。実態は、帝政ロシアと本質的な構造は変わっていなかったのだ。それはスターリン以後、現在のプーチン政権にまで引き継がれている。それがプーチンの大ロシア主義の根幹にあり、現在のウクライナほかへの紛争や戦争の原動力になっている。

 

 

つまり、ソビエト連邦のあり方は、アカ狩りで有名な共和党マッカーシーなどが言うような共産主義国家ではない。スターリンによる一党独裁独裁政権であり、もっというなら、クレムリンの特権階級間における独裁たらい回し国家に過ぎない。また、社会制度としていえば、マルクスの言う共産主義国家へ向かう過程の社会主義国家だっただけ。マルクスの言う共産主義国家は、世界のどこにも実現した事実は存在しない。理想国家とされたままなのだ。これは幾分色彩は違うが中国においても同じ。

 



これも多くの人が勘違いしているが、ヨーロッパ諸国では、社会主義を取り入れて、資本主義経済を改革し、イギリスを除く、ヨーロッパ諸国の多くが社会民主主義国家の政治形態をとっている。それが独裁政権の誕生を阻止しつつ、資本家のみに富が集中する負の要素を不十分ではあるが、社会福祉の充実という形で、抑制する働きを生んでいるのだ。

 

 

そもそも、「国富論」を唱え、資本主義社会が人々を幸福に導くとしたアダム・スミスは、富の再配分(労働者の保護)と資本家の社会貢献(社会福祉)を前提としている。かつ、本来の資本活動ではない、株式操作による利益や企業買収による特定企業の寡占化にも警告を鳴らし、資本主義社会の本来の目指す営利活動と反するものだと断罪しているのだ。



マルクスエンゲルスは、ここに着目し、資本主義社会では富の再配分機能が行き詰まると予想。それを担保するために、市民コミューンの形成を言い出した。そして、これは、その後、形を変えてベルリンの壁崩壊の影の原動力となった。市民の集合による社会的自由や経済的自由の獲得行為とそのための小規模政策行動ができるイデオロギーを超えた市民ネットワークである。

 

 

その時点で、いわゆるソビエト独裁国家共産主義国家樹立の幻想は、意味を失い、同時に、ほぼ人格障害と思われる共和党マッカーシーの言う反共主義も意味をなさなくなった。

 



そうした時代に、60年安保闘争前後に生まれた反共主義を、70年安保闘争時点で再熱させ、ベルリンの壁崩壊後、意味なさなくなった反共にこの国を縛り付けてきたのは、自民党右派勢力とそのシンパ(右翼や暴力団など反社勢力)である。ただし、彼らの中で反共は意味をかえ、独裁国家建設に異議を申し立てる者や自民党右派の実態がそれであることを指摘する抵抗勢力に対してとなった。



それを徹底したのが小泉以後の自民党政権であり、決定づけたのが安倍晋三である。



戦前回帰の憲法改悪や大衆支配と隷従化のために、情報操作と株式操作を国家がやる。増税によって市民生活を圧迫しても、異議あるものを生み出さない社会をつくりあげ、異議あるもの、異議があっても声ができないように格差の底に沈めていく。あるいは、社会から抹殺していく。



反共が意味を失ったとき、そこに登場したのは、まさに邪魔者は消すのスターリン主義であり、独裁政権による国家の私物化と寡占化だった。


それは、反共が意味性を失ったとき、待ってましたとばかり旧統一会教会との関係をより強靭にする力学へ結びついた。



安倍晋三スターリン主義による独裁国家建設の実態とそれを支えてきた旧統一教会の暴力との連携は、山上が意図したかどうかにかかわりなく、彼の私怨の先に白日に晒されたのだ。


安倍晋三がトランプやプーチン、習に近づきたがった理由もそこにある。