秀嶋賢人のはてなブログ

映画監督・NPO法人SocialNetProjectMOVE理事長

色男のいらなくなった国

「色男、金と力はなかりけり」と江戸ではいわれた。いまさらながら、うまいこと

をいったものだと思う。

 

金のためだけに心血注げば、それは当然、顔も険しくなるだろう。商業資本主義の基本というのは、どれだけ安い労働力や資材で物やサービスを生産、提供し、それを持たない、欲しがる他人、他の集団や異国に売りまくることだ。そりゃ面相も悪くなる。

 

まして、それを実現するためには、既得権益に割って入る力がいる。権力や権威を買収し、自ら既得権益や権力を手にれいて、お行儀の悪い恫喝まがいのことも駆け引きとして使う。そりゃ人相も悪くなる。

 

いい顔ばかりをしてはいられない。顔色ひとつ変えず、ときには薄く笑顔浮かべながら、従わせる。目が笑ってない。目の奥に怖さがある。逆らうとひどい目に遭わせるぞといっている。それりゃ色男とはいかない。

 

だが、いまは愛想のある悪顔というのがトレンドらしい。世界経済を牽引し、自国ファーストと自国スタンダードを当然とするアメリカ、中国の大統領や主席、他国干渉を続け、領土拡張を図る、これも自国ファーストのロシアの大統領など、笑顔は少ないが時折みえる愛嬌のある笑顔がいいらしい。

 

つい最近、この国でも同じような人物から同じような人物に首相役が移管された。残念ながら、アメリカ、中国、ロシアの彼らよりは世界戦略、外交の能力、知力、腕力には遠く及ばないけれど。

 

ただ、いずれにも共通するのは、超高学歴ではないこと。政治の世界で下住みから這い上がった実力者だと民衆に思われていることだ。正確にはそうした演出をして民衆の支持を得ている。そうしたマスコミ操作や警察権力の利用、司法操作はいずれも大得意だ。

 

いま世界に広がってるいるのは、色男でなく、「育ちのいい人、金と力に逆らえず」「育ちのいい人、お行儀良すぎで変えられず」らしい。

大統領選で番狂わせの目に遭ったヒラリーしかり、民主党の政権中枢にいた人々は、アメリカンインテリゲンチャ―の巣窟、ハーバード大卒を始めとするアイビーリーグやジョンホプキンス大卒など、名門校が圧倒的だ。

日本でもかつては政界でも東大、京大、早慶卒が幅を利かせていた時期がある。中央官僚に同窓生や先輩後輩が多いこともあって、政策実現にあうんの呼吸があったからだ。

経済発展が順調で、成熟しておらず、完成されていない資本主義時代には、こうした制度設計に長けた頭脳を持つ人間に役割りがあったし、それで成果も出せた。

しかし、資本主義が成熟してしまうとITやDNA、再生医療再生可能エネルギーなど形の見えない産業へと構造変化が進む。資本主義には消費する集団が必要だが、その牌は、低成長国といわれた国々の成長とともに少なくなる。

資源そのものも限りがあり、どこかを開発して手にいれるための、どこかが地球上においては、アフリカくらいしかなくなった。つまり、資源を得て、加工し、あるいはそのまま売買するという資本主義のシステムが大規模には成立しなくなったのだ。

そこでマネーゲームが高度資本主義の中心になり、当然ながら元本を持つ者とと持たざる者の差は拡大する。投資の対象にならない事業も人も未来を観られない。

それへの不満が民衆の眼を狂わせている。確かな制度設計より、いますぐお恵みをになる。お恵みでなくても、自分たちにも未来がある。そう思わせてくれる力を強く望む。

描かれる未来の質や形、それが倫理や規範にのっとっているかは重要ではない。だって、インテリはそんなことばかりいって、ちっとも変化をもたらさないからだ。お行儀のよさ、育ちの良さがルールを壊すことに躊躇わせる。

そうだ。学歴なんかどうでもいい。たたき上げで苦労した人間なら、自分たちのことを理解できるし、自分たちの未来も考えているはずだと思う。そして、情報操作でそう思い込む。

だから、野党には何も期待しない。だって、ルールをぶちこわす腕力、喧嘩の強さは感じないから。

世論調査で、これを表す結果が出た。菅新政権への期待度は7割に近い。でいながら、モリカケなど政権中枢もからむ事案の捜査には解明が必要と、これも6割の意志が示されている。じつに矛盾する。


新政権とは名ばかりの顔を変えただけの政権だ。当然ながら、前政権の刑法罰にも価する事案は隠蔽を続けるに決まっている。なのに、その政権を圧倒的に支持しながら、自公政権がひた隠しにしている、悪しきことについては捜査を求めているのだ。

答えは簡単。自分はいい人でいたいから。だから政権の悪にはノーという。けれど、経済をよくする力は、叩き上げの腕力のある人にやってもらいたい。その過程も手法も丸投げ。実現する未来の質や形も問わない。

民衆が描く未来像が、ただ経済的に豊かな暮らしだけになっているからだ。そこに、金と力のない、かっこいいだけの色男はいらない。

ぼくは、かっこいい人がいない国ほど最低な国はないと思うけどね。